ペルー、首都や南部で非常事態を延長 衝突死者50人に

【サンパウロ=宮本英威】南米ペルー政府は15日から、非常事態宣言を30日間延長した。首都リマ、南部クスコ州などが対象となる。2022年12月7日に当時のカスティジョ大統領が罷免されたのを受けたデモの拡大で混乱がおさまらないのに対応した。1月15日までに治安部隊との衝突などで少なくとも50人が死亡した。
ペルー政府は12月15日から30日間、全国で非常事態の期間に入っていた。今回は幹線道路の封鎖など、抗議活動への懸念が強い地域が延長の対象になった。憲法で保障されている集会や通行の自由などの権利の一部が制限が続くことになる。
南部プノ州では1月15日、10日間の夜間行動制限が始まった。午後8時から午前4時までは外出が制限される。
ペルーは南米では観光が盛んな国の一つだ。デモの影響で予約のキャンセルなども相次いでいる。世界遺産のマチュピチュ観光の玄関口となるクスコの空港は12日、予防的な措置で閉鎖された。空港業務に当たる職員や乗客の安全確保のためだった。14日には再開された。
副大統領から昇格したボルアルテ大統領への支持率は低いままだ。調査会社Ipsosが12~13日に実施した世論調査で、ボルアルテ氏の支持率は20%にとどまった。議会の支持率は14%とさらに低い。
デモ隊の要求もカスティジョ氏の釈放やボルアルテ氏の辞任、議会の解散など多様だ。治安部隊によるデモ隊への過度な武力行使にも反発は強まっている。
ペルー政界では汚職や不祥事が横行してきた。ボルアルテ氏やカスティジョ氏への支持率は低いが、かといって国民の期待を担える政党や政治家がいるわけでもなく、混乱の収束への道筋は見えない状況だ。
2018年以降の5年弱で大統領は5回交代した。政府と議会は24年4月に大統領選と議会選を実施する方向で動いている。従来の26年4月から2年早くなる見通しだが、デモではさらに早い選挙実施を求める声も出ている。