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米国防予算案、太平洋基金3倍 対中国シフト一段と

【ワシントン=中村亮】米議会上院が15日可決した2022会計年度(21年10月~22年9月)の国防権限法案は、米軍の対中国シフトをさらに進める内容だ。インド太平洋地域での米軍の能力向上に使う基金を3倍に増やす。台湾の自衛力強化に向け、バイデン政権に米軍主催の合同演習への招待を検討するよう促す。

下院は国防権限法案をすでに可決しており、バイデン大統領が近く署名して成立する。予算総額は7780億㌦(約88兆7000億円)と21会計年度に比べて5%増やした。与党・民主党のジャック・リード上院軍事委員長は15日の声明で「中国やロシアとの戦略的競争など差し迫った幅広い課題に対処するものだ」と強調した。

目玉はインド太平洋地域で軍事施設の整備や軍事演習などの費用に使う基金「太平洋抑止イニシアチブ」。71億㌦を計上して21会計年度の3.2倍に増やした。5月時点のバイデン政権の要求額(51億㌦)を上回り、議会の対中強硬姿勢を改めて浮き彫りにした。

米軍は沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ第一列島線に沿った拠点へ部隊を分散させる態勢をとる。少数の軍事基地に集中すれば中国のミサイル攻撃の標的になり、戦力が一気に低下する恐れがあるためだ。基金を使って拠点のインフラや軍事施設の整備や改修を加速する。弾薬や燃料の調達、貯蔵施設の整備も進めて補給体制を強化する。

主力の空軍基地が位置する米領グアムでは、高度なミサイル防衛システムの導入も急ぐ。米中が西太平洋で戦闘になると、中国は中距離弾道ミサイル「DF26」でグアムを標的にするとの見方が多いからだ。基金の一部はミサイル防衛システムの装備品の購入にも充てるとみられる。

議会は台湾との関係強化を政権に求めた。具体策としてハワイ沖で22年に実施する予定の米海軍主催の多国間海上訓練「環太平洋合同演習(リムパック)」への台湾の招待をあげた。リムパックは20年、新型コロナウイルスが広がる中でも10カ国が参加した。台湾が加われば能力の向上に資するほか、国際社会が台湾を支援する姿勢も打ち出せる。

議会は米軍と台湾軍の相互運用性を深めるべきだとも訴えた。海や空での状況認識や、ミサイル防衛システムの連携をあげた。米台の国防当局者の交流を増やすほか、防衛計画策定で協力を強め、米国が台湾の予備役制度の改善を支援するよう訴えた。

国防権限法案は将来の戦闘で使われる先端技術にも触れた。極超音速技術や量子科学技術、サイバー、指向性エネルギーをめぐる米中の軍事利用に向けた取り組みを比較分析するよう政権に求めた。極超音速兵器の技術では中国やロシアが米国を上回っているとの見方が多く、米国は巻き返しを急いでいる。

国防総省の調達先から中国の新疆ウイグル自治区を排除する条項も盛った。強制労働による人権侵害を問題視しているためだ。安定した備品調達を実現するため、サプライチェーン(供給網)の強化に同省も取り組むよう求めた。安保上の観点から企業の対外投資を審査する条項は企業の反対もあって取り下げられた。

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