米SEC、仮想通貨の保管業務に監視の目 新規則案

【ニューヨーク=竹内弘文】米証券取引委員会(SEC)は15日、機関投資家の暗号資産(仮想通貨)を保管する事業者に規制をかける新ルール案を可決した。会計監査を義務付け、事業者が倒産しても預けた資産が投資家に滞りなく返還されるよう、分別管理の徹底を図る。
金融資産のカストディー(資産管理)業務を手掛ける事業者は、顧客の機関投資家から預かった資金と有価証券について、自社保有の資産と分別管理することが規制で義務付けられている。ほかの債権者から取り立てられないようにするための仕組みで、きちんと管理されているかを確認するための公認会計士の抜き打ち検査実施なども必須だ。
ただ、米コインベース・グローバルなど仮想通貨のカストディー業務を手掛ける事業者は、仮想通貨が有価証券に該当せずSECの現行規制の対象外との立場をとっていた。今回の規制案では分別管理の対象を「すべての顧客資産」へ拡大し、仮想通貨も規制の枠内に含める。
SECのゲンスラー委員長は声明で、一部の仮想通貨事業者が預かり資産を適切に分別管理せず、自社保有の資産などと混同していた実態を指摘。「仮想通貨業界の一般的な運用方法をみるに、適格なカストディー事業者として(顧客の)投資顧問業から信頼されることはない」と断じた。
2022年7月に経営破綻した米セルシウス・ネットワークの破綻処理手続きでは、利息付き口座に仮想通貨を預けていた顧客の資産が、同社の保有財産として扱われることになった。11月に破綻した交換業大手FTXトレーディングでも顧客資産の混同があった。
約2カ月の意見公募を経てSECは最終規則にまとめるか検討する。その過程で修正される可能性はあるが、今回の案が実現すれば仮想通貨のカストディー事業者は法令順守のためのコスト負担が増す。
SECは同日、株式や社債などの決済期間を従来の2営業日から1営業日に縮める最終規則も可決した。顧客から売買注文を受けた証券会社は相場急変リスクに備えて決済機関に資金を預託する必要があり、決済期間が短縮すれば預託金を減らせる。
21年1月にゲームストップ株が急騰した騒動をきっかけに期間短縮を求める声が強まり、SECは22年2月に規則案を可決した。寄せられた意見を踏まえて最終規則では実施日を24年5月28日とした。当初の規則案に盛り込んだ日付から約2カ月先延ばししてシステム対応の準備期間を長めに設けた。