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米、巨大ITの小規模買収に照準 審査を強化へ

FTCのカーン委員長は巨大ITに厳しい姿勢で知られる=ロイター

【ワシントン=鳳山太成】米連邦取引委員会(FTC)は15日、アップルなど米IT(情報技術)大手5社による企業買収で、当局に報告不要の小規模な案件が過去10年で616件あったとの調査結果を公表した。競争を妨げないかどうか事前に調べる制度が十分に機能していない可能性があるとして、審査を強化する姿勢を表した。

反トラスト法(独占禁止法)を共同で所管するFTCと司法省は、一定の基準(現在は9200万ドル=約100億円)を上回る規模の買収案件を企業の届け出に基づき審査する。競争を妨げると判断すれば、買収完了を阻止したり一部事業の売却を求めたりする。基準を下回る比較的小さい案件では、企業は事前に報告する必要がない。

FTCはグーグルの親会社アルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトの5社を対象に、2010~19年に当局に報告不要の買収を何件手掛けたか聞き取った。

調査結果によると、100万ドル以上の報告不要の案件は5社合計で616件あった。このうち100万~1000万ドルの小さい案件が39%を占めた。企業秘密を守るため、各社個別の数字や案件の詳細は公表していない。

616件のうち、94件は一定の基準を上回る大規模な買収だったにもかかわらず「報告不要」だった。報告義務の適用除外が認められるなど合法的に審査を免れていた。

少なくとも39%は買われた企業が「創業5年未満」だった。誕生して間もない若い企業でも特筆すべき有望な技術やサービスを抱えていれば、積極的に買いにいく巨大IT企業の姿勢が浮かび上がる。

FTCのカーン委員長は15日の公開会合で、調査結果を踏まえ「監視が行き届かないようにしている規則の抜け穴を見つけ出し、抜け穴を塞がなければいけない」と述べ、審査に厳しく臨む方針を示した。巨大ITの分割論を唱える同氏は6月、バイデン大統領の指名を受けて新委員長に就いた。

FTCが小規模の買収に目を付けた背景には「巨大IT企業がライバルに育ちそうな企業を小さいうちに買収し、競争を妨げているのではないか」との疑念がある。8月にはフェイスブックによる画像共有アプリ「インスタグラム」と対話アプリ「ワッツアップ」など新興企業の買収を問題視し、事業売却を求めて再提訴した。

IT各社は製品やサービスの質を高めるのが買収の目的だとして「競合潰し」の意図を否定してきた。競争当局の監視が厳しくなるなか、M&A(合併・買収)をテコにした成長戦略は見直しを迫られる可能性がある。

ただ買収審査制度の骨格は法律で定められており、当局の対応だけでは限界もある。カーン氏は「議会が反トラスト法を改革するのに報告書を役立ててほしい」と法改正も促した。

議会では競争当局の体制を強化したり、企業の買収を難しくしたりする複数の改正案が審議されている。与野党とも巨大IT企業に厳しい姿勢で臨むが、取り締まりの手法を巡って意見の対立が根深く、成立のメドはまだ立たない。

当局が監視を強める対象はITにとどまらない。ウィルソン委員(共和党)は「同様の調査を医療など他の業界でも実施すべきだ」と語った。FTCは垂直統合のM&Aに関する指針の見直しも決めた。米国で事業を展開する日本企業の戦略にも影響を及ぼす可能性がある。

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