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FRB議長「最大雇用へ急速に進展」 会見要旨

(更新)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は15日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開いた。テーパリング(量的緩和の縮小)の加速を決めた理由について「インフレ圧力が高まり、労働市場が急速に改善しているため」と述べた。主な発言と質疑応答は以下の通り。

きょう、我々は政策金利をゼロ近傍に据え置き、金利に関するフォワードガイダンス(先行きの指針)が定める判断基準に照らした経済の進捗状況を評価した。力強い労働市場とインフレ圧力が高まっていることを受け、資産購入の減額を加速すると決めた。

2021年の経済はワクチン接種の拡大と経済再開を反映し、力強く拡大する軌道に乗っている。財政・金融政策の支援と、家計や企業の健全な財務状況に支えられ、総需要は極めて堅調だ。新型コロナウイルスの変異型、オミクロン型の出現にともなうここ数週間の感染者数増は見通しに対するリスクとなる。

ウイルスの影響や供給制約にかかわらず、FOMCの参加者は、中期の経済・政策見通し(SEP)に示されるように急速な成長が続くと予測している。実質国内総生産(GDP)の伸び率予測の中央値は21年が5.5%、22年が4%となっている。

労働市場の改善と、非常に強い労働需要のなかで、経済は最大雇用に向けて急速に進展している。最近の労働市場の改善により、賃金分布の下限に位置する労働者や、アフリカ系、ヒスパニック系米国人などとの雇用格差が縮小している。労働力人口は11月に喜ばしい増加を示したが、高齢化や退職を反映し、依然として低水準にとどまっている。

雇用主は求人数を満たすことに苦労し、賃金はここ数年で最も速いペースで上昇している。特にウイルスのさらなる波が起こることを考慮すると、人手不足がどの程度続くかは不透明だ。FOMC参加者は労働市場が今後も改善し続け、失業率が年末までに3.5%に下がるとの中央値を示している。9月時点と比べ、今年と来年の失業率予測は大きく改善した。

需給の不均衡、物価上昇に寄与

パンデミック(世界的大流行)と経済再開に関連した需給の不均衡は、引き続き物価上昇率の高止まりに寄与している。特にボトルネックや供給制約は、当面の需要増に対応する生産の迅速さを制限している。これらの問題はウイルスの波によって悪化し、予想以上に大きく長引いている。

その結果、全体の物価上昇率は長期目標の2%を大きく上回っており、22年も続くとみられる。高インフレの主因はパンデミックによる混乱に起因するが、今やインフレは財やサービスに幅広く及んでいる。賃金も勢いよく上昇しているが、現状では賃金は物価上昇の大きな要因にはなっていない。

生産性を上回る実質賃金の上昇が続くとインフレ加速の圧力となるため、そのリスクは注視している。我々はインフレが22年末には2%に近い水準まで下がると予想している。FOMC参加者の物価上昇見通しの中央値は21年の5.3%から22年には2.6%に下がる。この軌跡は9月時点の予想を大きく上回る。

FOMC参加者は当面の間、労働市場が最大雇用と評価できる水準に達するまで、政策金利の水準を維持することが適切だと考えている。参加者全員が、残りの条件が22年に達成されると予測している。政策金利の適切な水準に関する予測の中央値は22年末に0.9%と9月時点の予測より0.5%ほど高い。

参加者は政策金利の水準がおおむね長期的な水準に近づくと推定される24年末までに、緩やかな金融政策の引き締めを想定している。もちろんこれらの予測は委員会の決定や計画を示すものではない。

本日の会合では資産購入の減額ペースを2倍に加速すると決めた。1月中旬から、毎月の資産購入ペースを米国債で200億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を100億ドルそれぞれ減らす。11月初旬時点での予測より数カ月早く、3月中旬までに有価証券の保有高の増加が終わることを意味する。

テーパリング早期終了で変化に対応

インフレ圧力が高まり、労働市場が急速に力強くなり、経済はこれ以上の政策支援を必要としていないため、我々はテーパリングを加速する。資産購入を早期に終わらせることで、想定されるあらゆる経済の変化に対処できるよう、政策をより適切に位置づけることができる。バランスシートの拡大を終えても、我々が保有する有価証券は緩和的な金融環境を支え続けるだろう。

主な質疑応答

――利上げできる条件となる最大雇用の目安とは。どのように見極めるのか。

「最大雇用を示す材料は広範におよぶ。失業率、労働参加率、求人数、賃金、雇用者の流出入などがある。労働者もヘッドラインの数字だけでなく、多様な人口動態を対象にした数字をみる必要がある。インフレとは異なり、様々な材料を踏まえて判断する」

「見極めについては価格と数量に注目する。主な価格指標は賃金で、最大雇用に見合った労働市場の状況かどうかを示す。離職率も非常に優れた指標の1つだ。人々はよりよい仕事に就けると思い離職するからだ。歴史的な高水準で推移しているということは、労働市場が非常に逼迫していることを示唆している。こうした指標をリアルタイムで評価する必要がある」

「経済は(パンデミック前の)20年2月と同じ状況には戻らない。パンデミック後の労働市場や景気は異なるものになった。最大雇用と物価安定は景気循環に応じて変化する。21年秋時点では、ワクチン普及と学校再開で労働参加が増えると考えたが、期待外れだった。11月の雇用統計ではやや改善がみられたが、まだ時間がかかりそうだ。そのなかでインフレは目標水準を上回る。こうしたことを踏まえ、金融政策のかじ取りをしなければならない」

――インフレに対する懸念はどう強まっていったのか。

「インフレは20年春の終わり頃からみられ、一時的なものとの見方が広がっていた。インフレ要因は非常に限られたものだった。だが労働力供給の問題はあまり進展がみられなかった。11月のFOMC前に発表された7~9月期の雇用コスト指数が非常に高く、テーパリングを加速すべきかとも考えた。その後の雇用統計で労働供給の増加がみられなかったこと、消費者物価指数(CPI)が非常に高水準だったことから、テーパリングを加速させる必要があると判断し、作業に取りかかった」

利上げまでの期間「それほど長くない」

――なぜテーパリングが終わる前に利上げに動かないのか。利上げまでの期間はどの程度になるか。

「テーパリングは緩和の追加を止めることだ。一方、利上げは緩和的な状況から緩和を取り除き始めることだ。資産購入を続けながら利上げに踏み切るのは適切ではない。利上げまでの期間はそれほど長くないとみている。前回の利上げ時も私はメンバーだったが、当時と比べて今の経済ははるかに強い。最大雇用により近づいている。物価上昇率も目標をは大きく上回っている。今後の会合で判断するだろう」

前回のサイクル「振り返りは有効」

――金融政策の効果が現れるまでには時間がかかる。インフレを考慮し、資産購入をなぜ今(縮小ではなく)停止しないのか。

「FRBのバランスシートに対処する際は、慎重に組織的に調整することが最善だと我々は学んだからだ。金融市場が敏感に反応する可能性もある。資産購入の減額幅を倍増することで、FOMCの向こう2回分の会合でテーパリングを終えることになる。この方法が適切だと判断した」

「金融政策の効果は長くして変わりやすい遅れをともなうというのは、ミルトン・フリードマンの有名な言葉だ。今のグローバルな金融市場は相互につながり、情勢は速く変化しうる。私の感覚では、金融情勢が経済に影響を与えるのはかなり速く、従来よりは短いと思う。我々が何をしようとしているのか伝えると、市場は即座に動く」

「FRBの保有資産の縮小については今回の会合で初めて議論したが、今後も議論が続くと思う。前回のサイクルで何が起こったのかを振り返ることは有益なことだ。ある程度、今回は状況が違うことが指摘されている」

――21年の物価予測は大きく上方修正されたが、22年と23年はほとんど動いていない。利上げするからか?

「2つの要素がある。供給制約は21年中に緩和するとの予測が広がっており、インフレは22年末にかけて大きく低下するとみられる。我々の政策も効果を発揮しはじめるだろう。だがそれを確実なこととみなして動くことはできないし、動くつもりもない。今は紛れもなくインフレが一段と持続的になるリスクが存在する。そのリスクに対処できるようにすることが本日の政策決定の理由の1つだ」

インフレ制御「後れを取っていない」

――FRBがインフレ制御に後れを取っているのではないか。

「我々は今後起こりうる様々な状況に対処できる位置にあると考えている。常に新しく入るデータに適応してきた。秋にかけてのデータは、インフレが持続的で高水準を保つリスクを示した。我々はそれに反応しており、後れを取っているとは思わない」

――オミクロン型の景気への影響をどうみているか。インフレやコロナで消費が減速する懸念は。

「まだ不透明な要素が多いため、声明文でもリスクと呼んだ。どの程度需要を抑えるのか、また供給を抑えるのか、まだ分からない。ただ、波に次ぐ波で、人々はコロナと共存することを学びつつある。ワクチンを受ける人が多いほど、経済への影響は小さくなる。デルタ型は供給網に影響を与えた。3週間、6週間後にはもっと多くのことが分かるだろう。現在の状況を考えればテーパリングをあと数カ月で終えるのは適切だと考えている」

「人々が仕事に戻り、賃金も上がっているので収入は増えている。インフレで賃金上昇分の一部は失われてしまっているが、それでも全体の所得は増えており、強い支出が続いている。基本的には消費は極めて堅調で、10~12月期の個人消費支出はかなり強いと予測している」

最大雇用の実現、「脅威のひとつは高インフレ」

――労働力人口の回復には何が必要となるか。

「労働市場は多くの指標からみても、前回の景気拡大期よりも活発だ。例えば求人倍率は過去最高で、退職者数や賃金などあらゆる指標が上昇している。こうしたなかでなぜ労働力人口が低位なのか。答えは複数あり、どれもが妥当だろう。健康上の懸念があり、コロナがまん延する中で労働市場に戻りたくないというのも1つ。子どもや高齢者の世話をしなければいけないというのもある。株価上昇で資産が増え、共働きを解消する人もいるだろう」

「人は自分の繁栄を最大化するために、自分の意思で労働に参加する。パンデミックが収束すれば労働力人口は回復するだろうが、パンデミックが長引くほど人々は新たな生活に慣れ、以前の仕事との接点はなくなり、労働に戻る人が少なくなる可能性がある。コロナのない世界で労働市場がどう変わるのか。我々が本当に見たいことだが、すぐにくるとは思えない」

「我々ができることは条件を整えることだ。労働市場が安定し、労働力が確保され、高い賃金が支払われれば、社会にとって良いことがたくさんある。最大雇用に戻るための大きな脅威の1つは、高インフレかもしれない。というのも元に戻るには時間がかかり、過去40年間でみられたような長期の景気拡大が必要だからだ。従って物価安定は不可欠となる」

――暗号資産(仮想通貨)について、金融安定性への懸念は。

「ステーブルコインは適切に規制されれば消費者にとって有益で効率的な金融システムの一部になり得るが、現在はそうではない。大規模な既存の技術との連携で利用が拡大する可能性もある。国民は決済網の安全性で信頼性で政府やFRBを頼っている。安定性の懸念とは思わないが、消費者にとって大きな問題となりうるため、注視すべき問題だ」

(米州総局=大島有美子、伴百江、長沼亜紀、野村優子)

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