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米シティ次期CEO、戦略見直し表明 事業売却も排除せず

【ニューヨーク=宮本岳則】米金融大手シティグループの次期最高経営責任者(CEO)に就任するジェーン・フレーザー社長は15日、決算説明会に出席し、事業戦略の抜本的な見直しを進めると表明した。5月にも具体的な実施計画を公表するという。米当局から要求されたリスク管理体制の強化に取り組むほか、非中核部門を売却する可能性も排除しない姿勢を示した。

フレーザー氏は米大手銀初の女性CEOとして注目を集めている。2020年9月、マイケル・コルバット現CEOが今年2月で引退すると発表し、フレーザー氏がその後任に決まった。この日はトップ交代発表後、初めて決算説明会に出席し、アナリストや投資家向けに今後の基本方針を語った。

フレーザー氏は取り組むべき課題として①競争的優位の確立②収益性の改善③米当局から受け取った改善要求への対応――を挙げた。今年2月に収益目標を発表した上で、目標達成に向けた具体的なプランを5月にまとめるという。フレーザー氏は「(シティを)シンプルで新しい形にする」と述べた。

投資家はライバルに見劣りする収益性に不満を募らせていた。米調査会社ファクトセットのデータをもとに新型コロナの影響がなかった19年12月の自己資本利益率(ROE)を比較すると、米銀最大手JPモルガン・チェースが15%近い数字を達成したのに対し、シティは11%にとどまる。収益性の低さは株価にも反映され、直近のPBR(株価純資産倍率)は0.7倍で解散価値を下回っている。

シティの強みは米銀で最大規模の海外ネットワークだ。世界で企業や機関投資家向けに資金管理・決済事業を展開するほか、北米のみならず、アジアや中南米で消費者向け銀行業務を手掛ける。一方、事業規模が大きいだけで、部門間でシナジーを十分に発揮できていないとの指摘は多い。投資銀行業務やトレーディング事業では米ゴールドマン・サックスなどとの厳しい競争にさらされている。

焦点は非中核事業部門の売却やリストラなど、抜本的な改革にどこまで踏み込めるかどうかだ。フレーザー氏は事業戦略の見直しに着手したばかりで、具体的な計画はないとしながらも、「(新しい戦略に)合致しないと判断した場合、売却を検討することは合理的だ」と述べた。13日には富裕層部門の再編を発表している。

米当局との関係改善も急務だ。米連邦準備理事会(FRB)と米通貨監督庁(OCC)は20年10月、シティの内部統制に不備があったとして、早期是正を求める処分を発表し、シティは4億ドル(約420億円)の制裁金を科された。融資関連の事務代行業務で9億ドルの誤送金が発生し、リスク管理体制の甘さが問題視された。改善が確認できるまで、新規M&A(合併・買収)には当局の事前承認が必要になるなど、事業上の足かせになっている。

シティグループが15日発表した20年10~12月決算は、純利益が46億3200万ドルとなり、前年同期に比べて7%減った。貸し出しの利ざやが同0.63ポイント悪化の2%まで低下したことで、純金利収入が圧迫された。債券や株式の売買を仲介するトレーディング部門は好調を維持したが、補えなかった。

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