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FRB議長「予期せぬインフレ」機敏に対応 会見要旨

(更新)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は15日、米連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に記者会見を開いた。0.75%の利上げを決めた理由について「予想外のインフレがみられたため」と説明した。量的引き締め(QT)も続ける。今後も経済指標に応じて「機敏に対応する必要がある」と強調した。主な発言と質疑応答は以下の通り。

我々は高すぎる物価上昇率がもたらす苦難を理解している。下げるために迅速に動いている。米国の家庭と企業のため、物価安定を取り戻すべく必要なツールと決意がある。最大雇用と物価安定の促進という我々が議会に与えられた使命に照らせば、現在の状況は一目瞭然だ。労働市場は極めて逼迫し、インフレは進みすぎている。

本日、FOMCは政策金利を0.75%引き上げると決めた。利上げの継続が適切だと考える。バランスシートの規模を大幅に縮小し続ける。

1~3月期の米経済活動は縮小に転じたが、在庫と純輸出の急激な変動が堅調な需要を相殺したためだ。最近の指標では、消費が引き続き堅調なことから、4~6月期の実質国内総生産(GDP)は上向くと示唆されている。一方、企業の設備投資は減速し、住宅ローン金利の上昇によって住宅市場も軟調になっているようだ。

ここ数カ月の金融引き締めは経済成長を抑制し、需要と供給のバランスを改善するのに役立つだろう。経済・政策見通し(SEP)で参加者は見通しを下方修正し、24年にかけて成長率予測の中央値は2%を下回る予想だ。

労働市場は失業率が50年ぶりの低水準にあり、求人倍率は歴史的な高水準で、賃金上昇率も大きく、非常に逼迫した状況が続く。過去3カ月の平均雇用者数は40万8000人と年初よりは減速したが、それでも堅調だ。労働需要は非常に強いが供給は低迷しており、労働参加率は1月の会合からほぼ変わっていない。FOMC参加者は、労働市場の需給バランスが改善し、賃金と物価の上昇圧力が和らぐと予測する。

SEPによると失業率は今後数年間でやや上昇する見通しだ。22年末に3.7%、24年末には4.1%と、3月時点の予測を大きく上回る。インフレは長期目標の2%を大きく上回っている。米個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は4月までの12カ月間で6.3%上がった。

総需要は強く、供給制約は予想より大きく長引いている。価格(上昇)圧力は幅広いモノとサービスに広がっている。ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油などの高騰がガソリンや食料価格を押し上げ、インフレにさらなる上昇圧力をもたらしている。

FOMC参加者は、インフレ予測を上方修正した。PCE物価指数で中央値が22年は5.2%、23年が2.6%、24年が2.2%の見通しだ。参加者は引き続き上昇リスクがあるとみている。我々は、高インフレが、食料、住宅、交通などの必需品のコスト上昇に対応できない人々に大きな苦難を強いることを理解している。インフレを目標の2%に戻すため力を尽くしている。

5月の会合では、経済や金融情勢が予想通り進展すれば、今回の会合で0.5%の利上げを検討すべきだとの認識があった。インフレリスクを注視し、データや見通しの変化に機敏に対応していくと表明した。物価上昇率は再び予想外の上昇となり、インフレ見通しを示す指標も上がり、22年のインフレ予測は大幅に上方修正された。これらを受け、FOMCは本日の会合で目標金利をより引き上げることが妥当だと判断した。

SEPで示したように、22年末の(短期金利の指標である)フェデラルファンド(FF)金利の適切な水準に関する予測の中央値は3.4%であり、3月時点の予測より1.5%ポイント高く、長期的な予測より0.9%ポイント高い。中央値は23年末に3.8%、24年には3.4%に下がるが、それでも長期的な予測を上回る。もちろんFOMCの計画や決定を表すものではなく、1年以上先の経済状況を確実に知る人はいない。

0.75%利上げは異例の大きさ

今後数カ月間、我々はインフレが抑えられ2%に回帰していくという説得力のある証拠を探すことになる。継続的な利上げが適切だとみているが、そのペースは入ってくるデータと経済の見通しに左右されるだろう。本日の0.75%の利上げは明らかに異例の大きさで、この規模の利上げが頻繁に行われるとは考えていない。現時点では、次回会合で0.5%もしくは0.75%の利上げを行う可能性が高いだろう。

我々は会合ごとに判断し、考えをできるだけ明確に伝え続ける。この不確実な環境で適切な金融政策をとるには、経済はしばしば予期せぬ形に進むことを認識する必要がある。インフレはこの1年で明らかに進んでおり、さらなる驚きが待ち受けているかもしれない。我々は機敏に対応する必要がある。既に極めて困難で不確実な状況なこの時期に、不確実性なことを加えることがないよう努める。

――5月の記者会見では6、7月も0.5%の利上げを進める意向を示していたが、変えた理由は。

「我々は常に金融政策の意図を明確にすることを目指している。経済見通しには不確実性が伴うため、金融政策がどう変化する可能性があるか市場参加者が理解していれば、より効果的になる。特に物価上昇率が目標を大きく上回る極めて異例な状況下では、通常よりも明確にすることが有効だ」

「(0.5%の利上げは)経済が予想通りに推移することが前提で、予想より悪化した際には積極的に動くことを検討すると述べた。前週末発表の消費者物価指数(CPI)とインフレ予測のデータを踏まえ、(0.75%の利上げが)適切だと考えた。次回会合で判断するために6週間待つことは不適切で、迅速に対応する必要があった」

次回の利上げ、0.5%か0.75%の可能性

――なぜ0.75%の利上げに踏み切ったのか。

「我々が求めているのは、インフレ圧力が弱まっていることを示し、物価上昇率が下がっているという説得力のある証拠だ。従って物価上昇率が毎月下がり続けることを確認したい。本来は今日時点で物価上昇率が横ばいとなり、低下し始める明確な兆候が見られると期待していた。予想に反してインフレは止まらず、インフレ予測は上昇した。特に予測の上がり方が顕著だったため、今回の会合で強力な行動を取ることが妥当と判断し、異例となる0.75%の利上げを決めた」

「今回は0.75%だったが、次回は0.5%か0.75%の利上げになる可能性が高い。そうすれば7月の会合後には正常な範囲に入り、今後どのようなスピードで(引き締めを)進めるかの選択肢が広がる」

――インフレ予測は利上げ判断にどう影響したのか。

「消費者や専門家へのアンケート調査などを踏まえると、短期的な期待物価上昇率は高いままだが、今後数年で急激に下がるとの見通しだ。長期的には目標の2%に近づくだろう。こうした見方を揺るがすデータについては非常に真剣に受け止めている。ミシガン大調査の消費者のインフレ予測は速報値ではあるものの、非常に目を引くものだった。真剣に受け止めなければいけないと考えた」

ブラックアウト中の判断変更、10年超で1、2回

――0.75%の利上げは直前に決まった。ガイダンス(指針)が効果的な手段ではなくなる懸念は。

「今年に入り、政策金利を上げる前から(ガイダンスによって)我々の意図が明らかになり、金融情勢はかなり引き締まった。非常に健全な現象だ。いまは物価上昇率の低下を望んでいる」

「今回のように委員会開催に時期が近く、(FOMC参加者が公の情報発信をできない)ブラックアウト期間に、実際の判断を変えるようなデータが出てくるのは異常だ。自分のFRBでの過去10年超の経験で、このような事態は1回か2回しか見たことがない。同じようなことが頻繁に起こるとは思えない」

――インフレを抑えられなければどうするのか。

「この数カ月の出来事が(米経済をソフトランディング=軟着陸させる)難易度を引き上げ、一層難しい状況を作り出している。我々が制御できない商品価格の変動や急上昇という要素に左右される可能性が大きくなっている」

「我々が見たいのは毎月の物価上昇率の低下だ。現在の政策金利は中立金利よりも低い。いずれは政策金利の水準まで上がる。その際の利上げペースが問題だが、インフレが収まったという証拠を得るまでは勝利宣言するつもりはない。目標は強い労働市場を保つ間に物価上昇率を2%に下げることだ。我々のコントロールできない外部要因もあり、簡単ではないが道筋はある。労働市場の需給バランスが改善すれば、賃金上昇圧力が低下し、2%の物価目標に見合ったものとなるだろう」

失業率4%で物価上昇2%達成なら「成功」

――声明から「強い労働市場を保てる」との文言を削除した。インフレを抑えるためには失業率の上昇は避けられないのか。

「仮に(SEPの予測通り)失業率が24年に4.1%まで上がったとしても、歴史的な低水準だ。4%以下の失業率は数年前までごくまれだった。4.1%の失業率で、2%に近い物価上昇率が達成できれば成功といえるだろう。物価安定なしに望ましい労働市場は実現できない」

「削除した部分には、金融政策だけで2%のインフレと強い労働市場を実現できると記していた。(ロシアの)ウクライナ侵攻でエネルギーや食品などの高騰や供給網への影響が予想以上に広がっている。金融政策だけで実現できないと判断し、適切な文言だと思えなかったため、削除した」

――消費者が買い物を減らすなど行動を変えていると思うか。

「小売売上高などを注視している。売り上げが減少している部門もあるが、概して消費は堅調だ。消費者の経済状態はよく、低迷の兆候はみられない。消費者の景況感は非常に低いが、それはガソリン価格の高騰と関係があるだろう。株価の下落も理由となる。ただ経済は堅調な水準にある」

――2%の物価目標に、エネルギー価格をどの程度織り込んでいるのか。

「インフレは(エネルギーも含む)全体を指しており、それが我々の最終目標だ。当然(食品・エネルギーを除く)コア指数も注視する。物価動向をよく示し、金融政策のツールとも深く関わるからだ。コア指数に入らないエネルギーは世界のコモディティー(商品)価格に左右されるし、食品も同様で、我々のツールの範囲外だ。今は非常に難しい状況にある」

FRBがインフレ抑制、国民の確信が重要

――インフレを金融政策の指標として重視しすぎて(利上げなど)引き締めをしすぎる懸念は。

「(引き締めが)過剰になるリスクは常にあり、そのリスクは承知している。我々が犯しうる最悪の過ちは、インフレの抑制に失敗することだ。我々は必ず物価の安定を取り戻さなければいけない。物価の安定がなければ経済は立ち行かないからだ。(賃金上昇と物価上昇が互いに作用して悪循環となる)スパイラルは起きておらず、インフレを2%に戻せるというのが一般的な見方だろう」

「この信頼を維持することが重要だ。本当に大事なのは、FRBには(物価安定のための)手段があり、それを使うことでインフレを抑えられると国民が確信を持てるようにすることだ」

――FRBはインフレの加速を受け、この2年間の政策検証を始めているのか。

「なぜ予想以上にインフレが加速し、持続しているのを注意深く調べている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前には人口減や高齢化などデフレ要因が支配的だった。その後異常なショックを経験した。パンデミックやその対応、経済再開に伴うインフレ、ロシアのウクライナ侵攻、中国での操業停止と続いた」

「供給側の変化なしには、このようなインフレは起こりえない。世界でインフレが起きており異常だ。どのような世界に向かうのかは当面見通せないが、新しい状況で物価安定を見つけなければならない」

――住宅市場の見通しは。

「非常に低金利の状況で、パンデミックに入った。郊外への移動需要で住宅価格が高騰した。今は住宅ローン金利が急上昇しており、住宅投資への影響を注視している。住宅の供給が歴史的に低水準のため、非常に逼迫した市場だ。金利が上がっても、価格はしばらく上がり続ける可能性がある。複雑な状況だ」

(米州総局=大島有美子、長沼亜紀、吉田圭織、野村優子)

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