メキシコ検察、前国防相を訴追せず 麻薬取引関与の疑惑
(更新)

【ニューヨーク=宮本英威】メキシコ検察は14日、シエンフエゴス前国防相が麻薬組織とのかかわりを疑われた事件で、訴追しないと発表した。公表した声明で「犯罪組織との接触は確認できなかった」と説明した。ロペスオブラドール大統領は15日、「検察の判断を政府としても支持する」と述べた。
メキシコでは麻薬組織の影響力が強く、政府や司法にも浸透しているとされる。米国からメキシコに移送された際には、不処罰になる可能性を指摘する声も出ていた。ロペスオブラドール氏は汚職撲滅を重要施策に掲げているが、国民の反発が強まる可能性もある。
シエンフエゴス氏は2020年10月、米西部ロサンゼルスの空港で米当局によって拘束された。米検察は麻薬取引や資金洗浄(マネーロンダリング)の罪で起訴した。
メキシコ政府は「事前の通告や協力体制がなかった」として反発し、身柄の引き渡しを求めた。米国は11月に起訴を取り消すという異例の判断を示し、シエンフエゴス氏はメキシコに帰国していた。米司法省は15日、メキシコ検察の判断について「メキシコ当局が失敗したのであれば、米国はシエンフエゴス氏を再び起訴する権利がある」とのコメントを公表した。
シエンフエゴス氏は12~18年、ペニャニエト前政権で国防相を務め、麻薬組織の取り締まりを主導する地位にあった。ロペスオブラドール氏は20年10月には「もしも罪を犯していたならば罰せられるべきだ」と述べていた。