中国YMTCなど30社超を禁輸リスト 米商務省が発表

【ワシントン=飛田臨太郎】米商務省は15日、中国半導体メーカーの長江存儲科技(YMTC)を含む30超の中国企業・団体を事実上の禁輸リストに加えると発表した。バイデン政権は10月に先端半導体の技術や製造装置を巡り、中国向けの輸出を事実上禁じており、今回の措置で先端品以外の製品・サービスにも対象を広げる。
商務省は「米国の国家安全保障や外交政策の利益に反する活動に関与、もしくは関与するおそれがある合理的理由が存在する」と説明した。対象企業への米国製品の輸出申請は商務省が原則却下する。

YMTCは中国政府系ファンドから多額の資金を受け、データ保存に使う「NAND型フラッシュメモリー」などの量産で急成長したとされる。米政府がすでに輸出を厳しく取り締まっている中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に米製品を横流ししているとの指摘が米議会などから強まっていた。
YMTCの日本子会社も禁輸の指定を受けた。10月から始まった先端品の輸出規制に続き、今回の決定でYMTCの経営環境は厳しくなりそうだ。
人工知能(AI)向けの半導体などをてがける中科寒武紀科技(カンブリコン)も入った。中国国内の半導体のサプライチェーン(供給網)で重要な役割を担っているとされる。
露光装置に強みを持つSMEE(上海微電子装備集団)も対象になった。上流の技術開発企業にまで網を広げる。
中国は世界貿易機関(WTO)に米国の先端半導体を巡る対中輸出規制が不当だと提訴したばかりだ。中国商務省は12日夜の公表文で「典型的な貿易保護主義」だと批判した。
半導体関連の米中対立は激しさを増している。バイデン政権は規制の力点を安全保障に置く。
半導体は軍事開発に不可欠で「極超音速ミサイル」や精密誘導兵器など最新兵器の優劣に直結する。レモンド商務長官は「我々は中国に先んじる必要がある。彼らの軍事的進歩に必要なこの技術を与えてはならない」と強調する。
米政府は同盟国に先端半導体の対中輸出規制で追随するよう要請している。
米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は12日の記者会見で「日本やオランダ、その他の国々と話し合いをしてきた」と述べた。「同盟国との連携は優先事項であり、努力している」と強調した。日本とオランダを最優先に交渉している。米産業界がビジネス環境が不利になったと訴えているためだ。
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