米SECの気候変動規則案に共和党反発 「最高裁判断も」

【ニューヨーク=大島有美子】米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長が15日、議会上院の銀行委員会の公聴会に出席した。SECが3月に公表した気候変動リスクに関する企業の開示規則案に対し、行政機関の権限を逸脱しているとの指摘が共和党議員から相次いだ。連邦最高裁がSECの規制を無効と判断する可能性もちらつかせて圧力を強めた。
SECは上場企業に気候変動リスクの開示を求める規則案に関して、外部からの意見を募集した上で最終規則をとりまとめている。大企業の場合、2023年度の排出量を24年にも開示する必要がある。
同規則案は気候変動対策に重点を置く民主党からは支持されているが、共和党は企業の負担が膨大になると主張して反発を強める。上院銀行委の共和党トップを務めるトゥーミー議員は公聴会で「(SECは)最終的に裁判所に答えなければならないだろう」と述べてけん制した。
連邦最高裁は6月、発電所に脱炭素を促す米環境保護局(EPA)の規制を制限する判断を示した。現行法のもとでは、議会はEPAに対し、火力から再生可能エネルギーなど発電形式の変更を促す規制をする権限を与えていないと判断した。
トゥーミー氏は同判断を引き合いに「行政機関は気候変動など議会が意図しない抜本的な政策変更をする権限を持っていない」と主張した。SECによる気候変動の開示規則は「まさに(EPAと)同じことだ」と述べ、訴訟に発展する可能性を示唆した。
ゲンスラー氏は「今日の投資家は気候変動リスクについて知りたがっている。我々は法律上我々が持つ権限に照らして規則を検討している」と述べ、妥当性を強調した。
公聴会では、SECと米商品先物取引委員会(CFTC)の所管が定まっていない暗号資産(仮想通貨)に関する規制も話題に上がった。ゲンスラー氏は代表的な仮想通貨のビットコインについて「議会がビットコインの規制に関してCFTCに大きな権限を与えるなら、もちろん一緒に仕事をする」と語り、改めて協力姿勢を示した。
同日、CFTCを監督する上院農業委員会でも公聴会を開いた。出席したCFTCのベナム委員長は仮想通貨に関して「CFTCはデジタル資産の商品市場に適した規制当局だ」と述べ、仮想通貨をCFTCの監督下に置くのが適切だと強調した。

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