/

フィリピン、米を軍協定で揺さぶり 存続3度目の保留

ドゥテルテ比大統領は「安保カード」で米国をゆさぶる=AP

【ワシントン=中村亮、マニラ=志賀優一】フィリピン政府は14日、米国と結んだ「訪問軍地位協定(VFA)」の存続について最終決定を見送った。見送りは3回目。協定は米比同盟の土台だが、フィリピンは存続を保留し米国を揺さぶる。両国の溝は海洋進出を進める中国を利する可能性がある。

ロクシン比外相は14日、比外務省がツイッターに投稿したビデオメッセージで協定破棄を6カ月保留すると説明した。「大統領が懸念する地位協定の側面についてさらに対処する」と強調した。

VFAは1998年に締結した協定で米兵のフィリピン国内での法的地位を定める。破棄すれば軍事同盟の維持が困難になる公算が大きい。フィリピンは2020年2月、協定破棄を一方的に米国へ通告した。米国がドゥテルテ大統領の側近の査証(ビザ)を取り消したことに対する報復措置とされる。

ドゥテルテ氏は破棄を2度にわたり保留。同氏が不公平とみる協定の項目について改定交渉を進めてきたが、今回も破棄撤回に踏み込まなかった。

オースティン米国防長官は4月上旬、フィリピンのロレンザーナ国防相と電話し、訪問軍地位協定の存続を促していた=AP

米国務省の報道担当者は14日の声明で破棄見送りを「歓迎する」としたが、米戦略国際問題研究所(CSIS)のグレゴリー・ポーリング上級研究員は「明らかに米国が望んだものではない」と指摘する。

南シナ海の軍事拠点化を進める中国に対抗するため、米はフィリピンとの関係修復を重視する。オースティン国防長官は4月上旬、ロレンザーナ比国防相と電話して協定存続を促した。フィリピンのロムアルデス駐米大使も協定の改定交渉を踏まえて「改善があった」との認識を示していた。

それでも協定存続を決めなかったのはドゥテルテ氏の意向が強かったとみられる。米国と距離を取る発言や行動が目立つドゥテルテ氏は、残る大統領の任期が1年ほど。米国との「安保カード」を切り札として保持したまま、米国と対峙したい思惑がちらつく。

CSISのポーリング氏は存続が決まらない現状を「中国にとって喜ばしい状況だ」と指摘する。南シナ海では3月から、フィリピンが排他的経済水域(EEZ)と主張する海域で中国船が停泊を続ける。米比の結束を試す形で中国がさらに挑発行動に出る可能性があり、米は警戒を強める。

米海軍第7艦隊は14日、原子力空母「ロナルド・レーガン」を中心とする打撃群が同日に南シナ海で軍事訓練を実施したと明らかにした。「南シナ海は国際法やルールに基づく秩序を重視する国々の経済を支える貿易の自由な流れの中枢だ」と強調、軍事拠点化を進める中国をけん制した。

フィリピンに展開する米軍はテロ対策が主要任務で、南シナ海で中国をけん制する効果は薄い。ランドール・シュライバー元国防次官補は「有事の際に米軍がフィリピンの拠点にアクセスしやすい環境づくりを進めることが望ましい」と指摘する。両国は14年に米軍のフィリピンでの活動拡大を認める軍事協定を結んだが、米国に不信感を持つドゥテルテ政権下で実行が滞っているとの見方が多い。

米軍は南シナ海や台湾海峡で中国との戦闘が起きた場合、沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に部隊を分散させる戦略をとる構えだ。巨大な軍事基地に部隊を集中させると中国のミサイル攻撃を受け、戦力が一気に下がるリスクがあるからだ。南シナ海や台湾海峡へ地理的に近いフィリピンとの関係を改善できるかどうかはバイデン政権の対中国政策を左右する。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

バイデン政権

アメリカの「バイデン政権」に関する最新ニュースを紹介します。その他、日米関係や米中対立、安全保障問題なども詳しく伝えます。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン