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米、対テロから中国へシフト アフガン撤収表明

(更新)
14日、バイデン米大統領はテロとの戦いは最優先課題ではないとの認識をにじませた(ワシントン)=AP

【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は14日、約20年間に及ぶアフガニスタン戦争を終結させ、駐留米軍を9月11日までに撤収する方針を正式表明した。迷走を重ねて膨大な時間とカネを注ぎ込んだ「テロとの戦い」から、中国への対抗に一段と軸足を移す。

15日にブリンケン米国務長官がアフガニスタンを訪問し、ガニ大統領に米国の撤収方針を伝えた。AP通信によると、ガニ氏は「米国の決定を尊重する」と応じた。会談で、ブリンケン氏は両国関係は「変化している」とも述べた。

バイデン氏は14日の演説で、「いま直面する課題に対処する必要がある」と、アフガンからの撤収理由に言及した。テロとの戦いは米国の最重要課題ではなくなったとの認識をにじませた。

代わりに「ますます自己主張を強める中国」との戦略的競争を課題にあげた。「我々は厳しい競争に対処するため米国の競争力(の向上)を支援すべきだ」と強調した。

中国の台頭に対処する上で、テロとの戦いは足かせとなってきた。オバマ政権は2011年にイラクからの撤収を実現したが、過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭を招き、14年に再派兵を強いられた。16年のアフガン撤収計画も治安悪化を受けて撤回した。トランプ政権もアフガンやシリアからの完全撤収を訴えたが未完に終わった。

米ブラウン大は米国が01年以降、テロとの戦いに少なくとも6.4兆ドル(約700兆円)をつぎ込んだと推計する。日本の国家予算のおよそ7年分に相当する。

アフガン戦争には約2兆ドルを投じたが、迷走を重ねた。01年9月11日の米同時テロを受けてブッシュ政権が軍事介入に踏み切り、ピーク時には一時10万人の米兵が駐留した。11年5月に国際テロ組織アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディン容疑者を殺害したものの、反政府武装勢力タリバンは抵抗を続け、テロの芽は世界に散らばったままだ。

単純比較は難しいが、インド太平洋軍が今年3月に議会に対してアジア地域での軍事力強化のために要求した予算は今後6年間で273億ドルにとどまる。アフガンからの完全撤収が実現すれば、資金や兵力をアジア太平洋地域に振り分けることができる。

米軍の立て直しは不可欠だ。対中戦略はテロとの戦いと2つの点で大きく異なる。大規模な戦力を持たないテロ組織に対して、陸軍や海兵隊は制海権の維持を考慮する必要はなかったが、中国に対しては艦船の進軍を制止するため地上配備型の対艦ミサイルの配備などが必要になる。

もう一つの違いは時間軸だ。対テロ戦では米軍が時間をかけて部隊を準備できたが、中国は先制攻撃を排除せず素早く作戦を完了する戦略を持つとされる。インド太平洋軍の説明では有事の際に米軍が西海岸から西太平洋に部隊を集めるのに約3週間かかり不利だ。

インド太平洋軍は沖縄からフィリピンを結ぶ「第1列島線」に沿ってミサイル網を築く構想を掲げる。アジアに前方展開する部隊が戦闘序盤に対艦・対空ミサイルを駆使して中国軍に打撃を与え、部隊集結の時間を稼ぐ狙いがある。

この構想にはフィリピンやインドネシアなどのアジア諸国との協調が前提となる。米国のミサイル部隊を受け入れれば中国の攻撃対象となり、経済で報復を受けるリスクも高まる。対中包囲網の実現にはハードルが高いのも実情だ。

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