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まだ拭えぬ米のインフレリスク(NY特急便)

米州総局 後藤達也

米国の人手不足は解消の兆しがみえない(米フロリダ州)=ロイター

14日に発表された8月の米消費者物価指数(CPI)は食品とエネルギーを除いたコア指数で前年同月比4.0%上昇した。市場予想(4.2%)をやや下回ったが、品目をつぶさにみると、インフレ長期化のリスクは根強いとの指摘も多い。市場は2022年後半の米利上げの可能性も意識している。

コア指数は6月に4.5%と約30年ぶりの伸び率を記録した。その後は2カ月連続で上昇率を縮めた。前月比でみると8月は0.1%の上昇で、6カ月ぶりの小ささにとどまった。4~6月に経済対策や経済再開の影響で大きく値上がりした勢いは一服したかたちだ。

前月比の動きで注目が集まったのは1.5%下落した中古車だ。新車不足と経済再開で需給が逼迫し、4~6月に高騰したが、一服感が出てきた。航空運賃も前月比で9.1%下がった。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は「経済再開で影響を受けた一部のモノやサービスがこれまでのインフレの急上昇をもたらしてきた」と説明する。まさにそうした品目の値上がりに頭打ち感が出てきた。

では全体の物価上昇率も落ち着くかというと、そう単純ではない。モルガン・スタンレーのエレン・ゼントナー氏は「今後、インフレ圧力が持続的にかかっていくことを示す兆候はやや強まっている」と指摘する。

ゼントナー氏が今回のCPIで注目するのは住宅だ。持ち家の購入価格を家賃に換算する帰属家賃や通常の家賃が上昇している。住宅はCPI全品目のうち3割強の寄与度があり、指数への影響は大きい。

住宅価格は都市部、郊外を問わず全米で騰勢を強めており、上昇率は05~06年の住宅バブル期を上回る。ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は「(建材や建設作業員などの)供給不足の解消には時間がかかり、住宅価格も家賃も上昇は続きやすい」と指摘する。

シティグループのアンドリュー・ホレンホースト氏は「最も目を引いたのは外食の価格が前年同月比で4.7%と引き続き上昇したことだ」と話す。記録的な人手不足の中、接客業の賃上げ圧力は強まっており、「販売価格に着実に転嫁されているサインだ」と指摘する。

FRBでも「インフレに影響してきた供給網(サプライチェーン)の混乱は当初の想定より長引くことがわかってきた」(フィラデルフィア連銀のハーカー総裁)との見方が広がっている。中古車などの高騰が一服しても、幅広い品目への物価上昇圧力が収まるとは限らなくなっている。

民間エコノミストのインフレ予想は着々と上昇してきた。リフィニティブによれば、22年のCPIコアの上昇率の予想は3月時点の調査で2.1%だったが、8月調査では2.8%に跳ね上がった。2%を大きく上回るインフレは当初4~6月ごろにとどまるとみられていたが、22年も続く公算が大きくなっている。

ダウ工業株30種平均の終値は292ドル安の3万4577ドルだった。インフレが長引くリスクが意識され、景気や利上げを巡る不透明感が強まっている。過去数カ月堅調だった米国株も先週以降は上値の重さが目立つようになっている。

(ニューヨーク=後藤達也)

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