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米サウジ、修復へトップ会談 記者殺害究明「棚上げ」 

【ワシントン=坂口幸裕、ドバイ=福冨隼太郎】米国とサウジアラビアが関係修復にカジを切った。バイデン米大統領が7月中旬にサウジを訪れ、同国の実力者ムハンマド皇太子と会談する日程が固まった。関係が冷え込むきっかけになったサウジ人の著名記者カショギ氏殺害の真相究明を事実上、棚上げする。中東で影響力を強める中国やロシアを意識し、実利を優先する。

米政府高官は14日、記者団に「米国民の利害にかかわるタイミングで中東諸国の首脳が集うサウジを訪問し、パートナーと関係を前進させるために話し合うのは重要だ。米国民に利益をもたらす」と指摘。「エネルギー安全保障は喫緊の課題だ」と述べた。

サウジは伝統的な親米国だが、2021年1月に発足したバイデン政権とはギクシャクした関係が続いてきた。同政権はトランプ前米政権に比べ人権を重視。同年2月には米国家情報長官室が調査報告書を公表し、皇太子がカショギ氏を「拘束または殺害する作戦を承認した」と断定した。これで米国とサウジの関係は一気に冷え込んだ。

民主党の劣勢が伝えられる11月の中間選挙を前に、バイデン氏は有権者の批判が強いガソリン高を和らげたいと考えている。サウジ訪問が実現すれば、ムハンマド氏との会談で正常化の糸口をつかむ好機になる。世界有数の産油国サウジの協力を引き出すには皇太子との「手打ち」が必要だと判断したもようだ。

バイデン政権はウクライナへのロシア侵攻を受け「戦時体制だ。緊急時の需要を満たすため原油や天然ガスの供給を増やす必要がある」(グランホルム・エネルギー長官)などと説明し、米国内でも化石燃料の増産を促してきた。だが、米石油各社はシェールオイルなどの増産に慎重だ。

脱炭素を推進するバイデン政権のもとで生産能力を高めても、「戦時」が終われば化石燃料の使用が規制される可能性がある。その場合、余剰設備を抱えることになりかねないからだ。

バイデン氏は10日の演説で米石油大手エクソンモービルを名指しし「なぜ生産しないのか。 石油を生産しないほうがもうかるからだ。課税されるべきだ」と批判した。

バイデン氏には焦りもにじむ。米政治サイト、リアル・クリア・ポリティクスによると、21年1月の政権発足直後に56%だった同氏の平均支持率は13日時点で38%台に落ち込んだ。ガソリンの高値に対する有権者の不満は一段と強まる。夏の行楽シーズンに間に合うように価格を引き下げたいという思惑が透ける。

米国の関与が低下した間隙を突き、中東に接近した中国やロシアに対抗する狙いもある。サウジ主導の石油輸出国機構(OPEC)がロシアを加えた「OPECプラス」の協調を優先し、増産を渋ったことが原油高が長引く一因だとの見方がある。

米国はシェールオイルの開発で石油の純輸出国に転じ、中東の優先度は低下した。代わりに経済力を高める中国が中東にエネルギーを依存する構図が鮮明になった。

米軍が駐留するサウジが中国と安保協力を深めることへの懸念も、バイデン政権がサウジとの関係の立て直しを急ぐ一因になった可能性がある。米CNNは、サウジが中国の協力で、独自の弾道ミサイルを製造しているという米情報機関の見立てを報じた。

サウジも安保上、米国との関係改善が必要だ。サウジと米国はともにイランと対立している。イランへの対抗上、米国はパートナーにしておきたいのが本音だ。

バイデン政権はイランの核開発を抑制する多国間合意への復帰を目指し、再建交渉に参加してきた。だが、交渉は進まず、イランが合意の履行義務を逸脱して進めるウラン濃縮の濃度は兵器に転用できる高レベルに近づいている。イランの核開発はサウジにも脅威だ。原油増産を協議することでバイデン政権の歓心を買うことができる。

米国との関係改善はサウジの対外イメージの回復にも役立つ。ムハンマド皇太子は石油に頼らない国造りを目指す「ビジョン2030」という改革を主導する。コンテンツビジネスなどの振興に外資は不可欠だ。だが、皇太子が記者殺害の「黒幕」だと米国に名指しされ、顧客の反発を恐れる米欧企業はサウジ進出をためらう。関係改善を演出し、外資誘致をてこ入れする構えだ。

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