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米のアフガン撤収決断 世論の派兵消極論が後押し

(更新)
バイデン米政権は米同時テロを起こしたアルカイダの米本土に対する脅威は後退したと主張する=AP

【ワシントン=中村亮】バイデン米政権は13日、米軍をアフガニスタンから9月までに完全撤収させる方針を明らかにした。治安が悪化したりアフガンの政治体制をめぐる和平協議が滞ったりしても無条件で撤収を断行する。派兵継続に消極的な世論を踏まえた決断だが、撤収ありきの計画はアフガンが国際テロの温床に戻ってしまうリスクがある。

「米国の利益を追求する最善の道は20年に及ぶアフガン戦争を終わらせることだ」。米政府高官は13日、記者団にバイデン大統領のアフガン政策の基本方針を説明した。高官はアフガンを拠点として2001年の米同時テロを起こした国際テロ組織アルカイダについて「いまは米本土に対して謀略を仕掛ける能力はない」と断言し、撤収は適切だと説明した。ロイター通信によるとブリンケン国務長官は14日、米軍と共に北大西洋条約機構(NATO)軍の他の駐留部隊も9月までに撤収すると表明した。

米国のトランプ前政権は20年2月にアフガンの反政府武装勢力タリバンと結んだ和平合意に、米軍を含む外国部隊が今年5月1日までに撤収すると明記した。米政府高官によると、外国部隊は完全撤収に近く着手するが期限には間に合わないため、9月11日を新たな期限とした。高官は「新たな期限よりも撤収は相当早く完了するかもしれない」と語った。

トランプ政権は撤収条件としてタリバンに対し、米国が後ろ盾となるアフガン政府軍に対する攻撃を減らしたり、国際テロ組織との関係を断絶したりすることを求めていた。トランプ政権はタリバンが条件を満たさない中でも駐留部隊の縮小を進めて議会やメディアから批判を浴びたが、バイデン政権は条件自体を棚上げした。

アフガン情勢の不安定さはバイデン政権も認める。国家情報長官室が13日公表した「脅威分析」と題する報告書は「アフガン政府が戦場で劣勢を強いられ、タリバンは軍事的勝利に自信を深めている」と指摘した。米財務省は今年初めにタリバンとアルカイダの関係が継続していると分析しており、タリバンの勢力が拡大すればテロ組織の活動が勢いづくリスクが増す。

タリバンの報道担当者は13日、ツイッターで「全ての外国部隊が完全撤収するまでアフガンに関する決定を下す会議に出席しない」と書きこんだ。バイデン政権はアフガン政府とタリバンの対話を促して停戦や暫定政権樹立を目指す方針だが、当面はタリバンが協議に応じない公算が大きい。

バイデン氏が率いる民主党からも撤収計画に反発が出た。ジャンヌ・シャヒーン上院議員は13日、政権が明確な撤収期限を設けたことについて「とても失望した」とツイッターで批判した。バイデン氏が副大統領だったオバマ政権はイラクからの撤収を急ぎ、その後に過激派組織「イスラム国」(IS)の台頭を許して再派兵を強いられた経緯がある。

バイデン氏が撤収を急ぐ背景には支持層の意向もある。調査会社ユーガブが20年3月に実施した調査によると、民主党支持者の58%がアフガン派兵について「誤りだった」と回答。「誤りでない」(20%)を大幅に上回った。開戦直後は超党派の強い支持を得たが、巨額の戦費に見合う戦果が見込めない状態で、世論の支持は低下している。

アフガン戦争の代償はあまりにも大きい。米ブラウン大は米国が投じた戦費が少なくとも約2兆㌦(約218兆円)と推計する。米シンクタンクの民主主義防衛財団の集計によると、アフガン人口の40%が住むエリアをめぐり、アフガン政府軍とタリバンがなお争っている。

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