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イラン核合意再建、深まる混迷 米「決裂シナリオ検討」

【ワシントン=中村亮、ドバイ=岐部秀光】イラン核合意の再建プロセスが膠着状態に陥っている。米国とイランの交渉は6月を最後に中断し、イランのライシ政権はウラン濃縮加速など核合意からの逸脱を一段と進める。欧州連合(EU)は交渉再開をはたらきかけるが、米国は核合意が無効になった場合の対処策の検討に着手した。

「イランが誠意を持って交渉に臨まずに時間が経過するほど(核保有に向けた)道のりが短くなる」。ブリンケン米国務長官が13日の記者会見で、核合意交渉の中断が長引く事態に懸念を示した。

2015年成立のイラン核合意はイランへの国際制裁を解除する代わりにイランの原子力活動を大きく制限する内容。米英独仏中ロとイランのあいだの国際的な取り決めだったが、米国のトランプ前政権が18年に一方的に離脱し制裁を復活させた。イランは反発しウラン濃縮活動を広げた。バイデン米政権がめざす核合意の再建は米国が合意に復帰し、当時の取り決めに双方が戻るようにすることが目的だ。

イランは6月の大統領選やその後の就任式典など国内政治行事を理由に交渉への参加を遅らせてきた。交渉チームはロウハニ前政権時代にアラグチ外務次官が代表を務めていたが、ライシ政権での新しい陣容は明らかになっていない。

イランは米国による制裁解除が先行すべきだとする立場を譲らない。アフガニスタンからの米軍撤収をめぐる混乱で批判を浴びたバイデン政権の苦境を見透かし、交渉再開そのものを外交カードにしている可能性がある。

米国のイラン担当特使を務めるロバート・マレー氏は13日、米シンクタンクのイベントで交渉の再開時期について言及を避け、イラン制裁の全面解除にも慎重な考えを示した。米国では与党・民主党内にも対イラン強硬派がいる。支持率が低迷するバイデン氏にとって、イランに譲歩する余地は乏しい。

EU欧州対外活動庁のモラ事務局次長は14日にイランを訪問し、交渉の再開を求めるとみられる。中国やロシアはイラン寄りの立場から米国に揺さぶりをかけている。

米政権は再建交渉が決裂するシナリオにも目配りを始めた。マレー氏は「イランが核開発制限を受け入れない場合、イランの核計画に対処する全ての選択肢を検討し、これまでと異なる現実に適応していく」と述べた。

ブリンケン氏は13日、国務省でイスラエルやアラブ首長国連邦(UAE)の外相と会談し、核合意が無効になった場合の対応策を協議した。マレー氏はサウジアラビアやカタールを近く訪れる予定だ。関係国と対イラン政策を擦り合わせて同国に対して外交圧力を強めるとみられる。

イスラエルはイランの核関連施設へのサイバー攻撃や核科学者の暗殺などで、核プログラムの進展を妨害しているとみられている。イランが瀬戸際戦略を進めるほど、イランとイスラエルの衝突リスクが増しかねない。

中東研究所のアレックス・ヴァタンカ上級研究員は「米国は中国とロシアに対し、核武装したイランは両国の国益ではないと訴えて協力を頼むしかない」と指摘する。

イランの核開発を監視する国際原子力機関(IAEA)が9月にまとめた報告書では、同国は最大濃縮度60%のウラン10キログラムを製造していた。核兵器級の90%に接近し、重大な核合意違反にあたる。同月下旬にはイランは一部の核関連施設へのIAEAの査察官の立ち入りを拒否した。

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