米の感染、累計5000万人 オミクロン型への警戒一段と

【ニューヨーク=宮本岳則、ロンドン=佐竹実】米欧で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。米国では13日、累計感染者数が5000万人を超えた。死者数も80万人に迫っている。これまで猛威を振るってきた「デルタ型」に加え、新たな変異型「オミクロン型」の出現で収束時期はみえなくなった。経済活動への影響が懸念されており、州政府や企業が対策に乗り出している。
米、死者数も累計80万人に近づく
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、米東部時間13日午後3時時点で新型コロナの累計感染者数は5000万人を超えた。死者数は約79万7900人となった。感染者数が2500万人に達したのは2021年1月で、米国で最初の感染者が確認されてから約1年後だった。一方、2500万人から5000万人には1年未満で到達している。予防ワクチンの接種が普及してもなお、勢いは収まっていない。
米国では10日時点で1日あたり新規感染者数(7日移動平均)が11万人を超え、前の週に比べて4割近く増えた。11月下旬の感謝祭シーズンに旅行をしたり、大勢で屋内に集まったりしたことで、感染拡大が加速したとの見方が出ている。 とくに北東部ニューハンプシャー州や中西部ミシガン州など寒冷地で感染者の急増が目立つ。

米疾病対策センター(CDC)によると、米国での感染の99%はデルタ型だ。ただ、オミクロン型の症例も10日時点で25州で確認されるなど、徐々に広がっている。米政府は欧州のようにオミクロン型が急速に広がる事態への警戒を強める。
オミクロン型、英で初の死者
英国ではオミクロン型が急速に広がる。13日には新たに1576件を確認し、累計では4713件となった。前日は1239件が確認されており、2日で2倍以上になっている。英国の1日の感染者数は5万人台でほとんどがデルタ型だが、12月中には感染者全体の半分以上がオミクロン型に置き換わる とみられている。
英保健安全局は、ワクチンを2回接種しただけではオミクロン型に効きづらいとしている。一方、3回接種をすれば症状を70~75%防げると指摘する。英政府はブースター接種(追加接種)でオミクロン型の流行に備える考えだ。22年1月末までに18歳以上の追加接種を終える予定だったが、1カ月前倒しした。軍を導入して接種を急いでいる。
13日にはオミクロン型感染者の中で1人の死亡を確認した。オミクロン型は重症化率が低いとの指摘もあるが、感染者の母数が増えれば重症者や死者も出てくる。ジョンソン英首相は「オミクロン型が軽症だという考えはいったん脇に置き、現在急増していることを認識する必要がある。私たちにできる最善のことはブースターを受けることだ」と呼びかけた。

オミクロン型の拡大を防ごうと米国の各州は対策を急いでいる。東部ニューヨーク州では13日から屋内でのマスク着用義務化が再び導入された。オフィスや店舗、娯楽施設、集合住宅のロビーなど屋内の公共の場では、ワクチン接種が義務付けられていない限りマスクの着用が必要とな る。西部カリフォルニア州も15日から22年1月15日まで屋内でマスク着用を義務化する。
各州政府などはワクチンの追加接種を推奨しており、足元で接種者数は増えている。ただ政治的対立の余波で一枚岩になれていない。バイデン政権による医療従事者への接種義務付けを巡る訴訟で、南部ルイジアナ州の連邦地裁判事が11月30日、仮差し止め命令を出した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、一部の大手病院では職員への接種義務付けを取りやめたという。
デルタ型に続き、オミクロン型の感染が広がれば、経済活動への影響は避けられない。米バンク・オブ・アメリカが12月4日までの1週間のクレジットカード利用状況を分析したところ、航空会社への支出が大幅に減少していた。主に海外旅行を取りやめた影響とみられる。検索大手米グーグルは社員に出社の再開を求める時期を先延ばしすることを決めた。
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