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米沿岸警備隊も対中国強化 ASEAN訓練へ80億円

【ワシントン=中村亮】米国の沿岸警備隊が南シナ海の実効支配を進める中国への対処を加速する。6000万ドル(約80億円)を使い、東南アジア諸国の海上警備当局への訓練を強化し、巡視船の供与先では東南アジアを最優先する。米軍に続き、アジアへの関与を強める。

バイデン米大統領は12日、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の首脳をホワイトハウスに招いて夕食会を開いた。ツイッターで「東南アジアに対する米国の関与を再確認した」と強調。「安全保障や繁栄、人権の尊重を確保するために協力していく重要性を話し合った」と書きこんだ。

米大統領がASEAN各国首脳を一度にホワイトハウスへ招くのは初めて。首脳会議に合わせ、米政権は経済や安全保障分野で1億5000万ドル規模の支援策を打ち出した。13日も首脳会議を開き、ASEANとの関係修復を進める。トランプ前大統領はASEAN関連の国際会議を相次ぎ欠席し、東南アジアを軽視したとの見方が広がった。

支援策の柱は沿岸警備隊が担う。沿岸警備隊は国土安全保障省の傘下にあり、漁船の違法操業や密貿易を取り締まったり、船舶内で起きた犯罪を捜査したりするための法律の執行機関だ。

これまでは米本土周辺を中心に活動してきたが、バイデン政権は2月にまとめたインド太平洋戦略で、沿岸警備隊がアジアへの関与を増やすと明記した。ASEAN向けの支援はその第1弾となる。南シナ海で中国と海洋権益を争うフィリピンやベトナム、マレーシアなどが念頭にある。

具体的には国務省と共同で訓練に特化した部隊を東南アジアに初めて配置する。米国のASEAN代表部には沿岸警備隊の人員を駐在させて各国との調整役を担う。退役した巡視船を優先的に東南アジアへ供与する。ハリス副大統領は2021年8月、ベトナムを訪れて3隻目の巡視船の供与を検討すると表明していた。

米国は、中国が南シナ海で軍事衝突に発展しない範囲で実効支配をゆっくりと進めていく「グレーゾーン戦略」と呼ばれる手法を使っているとみる。

たとえば21年春ごろには、フィリピンなどが領有権を主張する南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島のサンゴ礁周辺に約200隻の中国漁船が集結した。フィリピンは中国の海上民兵が配置されたとみており、自国の領有権を主張する狙いがあった可能性が高い。少なくとも見かけは民間漁船のため、フィリピンは軍ではなく一般的に海上警備当局が対応を迫られる。

米海軍の艦船は「航行の自由作戦」で中国による南シナ海の実効支配に対抗するが、仮に中国漁船が急接近してきても軍事力を行使することは極めて難しく、対応力に限界がある。米沿岸警備隊は自国の巡視船の保有数に限りがあるため東南アジアの海上警備当局の底上げを図り、中国のグレーゾーン戦略への対処を進める。

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