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AIの「頭脳」争奪戦激しく エヌビディアCPU参入

【シリコンバレー=佐藤浩実】人工知能(AI)の進化を支える半導体の開発競争が激しくなっている。米エヌビディアは12日、コンピューターの司令塔であるCPU(中央演算処理装置)に参入すると発表した。米アマゾン・ドット・コムなどIT(情報技術)大手が独自半導体を作る動きも相次ぐ。AIの「頭脳」をめぐる競争の構図が変わり始めている。

「パズルの最後のピースがそろった」。エヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は12日に主催したAI関連のイベントで、データセンター向けのCPU「グレース」を披露した。

プログラミング界の偉人、グレース・ホッパー氏にちなんで名付けたこのCPUはスピードが売りだ。同社のGPU(画像処理半導体)と一緒に使うと、「現状の最速のシステムと比べて10倍」(同社)の速さでAI計算をこなすという。

エヌビディアが開発したCPU「グレース」

2020年9月に買収を表明した英半導体設計大手のアームの設計技術を活用し、生産は台湾積体電路製造(TSMC)に委託する。

出荷開始は23年で、まず米エネルギー省やスイスの研究機関がスーパーコンピューターへの採用を決めた。ファンCEOは「主なクラウド企業のすべてがグレースの顧客になるだろう」と意気込む。

CPUは米インテルの牙城で、特にデータセンターで使うCPUのシェアは9割に達する。エヌビディアの挑戦を米株式市場は好感し、12日の同社の終値は前週末比5.6%上昇。逆にインテルは4.2%下がった。

半導体を買う顧客である大手IT企業も、自ら半導体の開発に乗り出している。アマゾンは「グラビトン」などデータセンターの頭脳となる複数種類の半導体を実用化済みだ。クラウドサービスに不要な機能をそぎ落とし、コストに対する性能を高めた。

この半導体を使ったクラウドサービスは、米ネットフリックスなどが利用する。米グーグルも自社開発した半導体を活用しており、米マイクロソフトも開発中とされる。

頭脳にあたる半導体に参入が相次ぐのは、AIが急速に進化しているためだ。

例えば、人のように自然な文章を書くと話題になった言語AIの「GPT-3」。このAIには計算結果を左右する評価軸(パラメーター)が1750億ある。19年に発表した1世代前の100倍以上で、18年にグーグルが発表したAI「BERT」と比べると500倍を超える。

エヌビディアの予測では、23年には100兆のパラメーターを持つAIが登場する。パラメーターが増えるほど複雑なサービスが可能になるが、必要な処理も増える。同社の担当者は「複雑なAI計算でのボトルネックを解消し、GPUの性能を引き出すためにCPUを開発した」と話す。

AIの活用範囲は文章の要約やチャットボット、機械翻訳、商品の推薦システムなど様々な分野に広がる。汎用的な半導体では効率が悪いため、各社は自社のサービスに特化した半導体を求めている。その需要に応えるため、アームは10年ぶりに設計を刷新した。

インテルも対抗策に動いている。3月、米アリゾナ州での2兆円の工場投資の計画とともに「ファウンドリー」と呼ぶ半導体の受託製造ビジネスへの進出を発表した。想定する顧客は、半導体の独自開発を進めるIT大手だ。

インテルは顧客に対して自社の知的財産を一部開放するほか、アームの設計技術を用いて開発した半導体の生産も引き受ける。名を捨て実を取る戦略だ。

ファウンドリーはTSMCなどアジア勢が圧倒的に強いが、地政学リスクも高まっている。インテルの受託構想にはクラウド大手3社を含む米IT各社が「歓迎」のコメントを寄せた。

AIの進化をきっかけに、半導体の開発をめぐる競争軸は複雑化しようとしている。

▼CPU(中央演算処理装置) 精緻な計算ができる、コンピューターの「司令塔」となる半導体。データセンターのサーバーに必ず組み込まれており、インテルが最大手だ。一方、エヌビディアの主力であるGPUは単純な計算を大量に実行するのが得意で「実動部隊」にあたる。AI計算は両方を組み合わせて行うことが多い。

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