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ロシア、ウクライナ西部に戦線拡大 米欧の武器流入阻止

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【ワシントン=中村亮】ロシア軍がウクライナ西部に戦線を拡大したのは、米欧からウクライナ軍への武器流入を阻止する狙いがある。北大西洋条約機構(NATO)に加盟するポーランドとの国境付近で攻撃が相次ぎ、米欧とロシアの偶発的衝突に発展するリスクも高まる。

ウクライナ西部リビウの軍当局は13日、ロシア軍がリビウ北西にある演習場にミサイル攻撃を実施したと発表した。30発以上のミサイルが発射され、35人が死亡、134人が負傷した。ロシア軍は11日にもウクライナ西部で2カ所の空軍基地を攻撃した。ウクライナ北部と東部、南部からの3ルートでの地上侵攻に加え、西部でもミサイル攻撃を実施して戦線を全土に広げた。

米アトランティック・カウンシルのバリー・パベル上級副所長はウクライナ西部での相次ぐ攻撃について「武器輸送の拠点とされる西部がもはや安全ではないということを示す戦略的効果がある」と指摘。米欧からウクライナ軍への武器の供与を防ぐ狙いがあると分析する。

米欧は武器の引き渡しを巡り、ロシアから攻撃を受けるリスクが小さかった西部の軍事基地を使ったり、国境付近で渡してウクライナ軍が陸送したりしているとみられる。ロシアのタス通信によると、同国のリャプコフ外務次官は12日、ウクライナに武器を輸送する欧米諸国の車両が攻撃対象になると警告していた。

ロシア軍はウクライナの首都キエフへの進軍が計画より遅れているとされ、大都市を制圧できていない。苦戦の理由の一つが、ウクライナ軍が持つ米国製の対戦車ミサイル「ジャベリン」や地対空ミサイル「スティンガー」を効果的に使っていることがあり、ロシア軍にとって武器の流入阻止が大きな課題に浮上している。

米国の在欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏はロシア軍の攻勢は10~14日以内にピークを迎えると指摘。ウクライナがこれまで通りの強い抵抗を続けて米欧による武器供与が拡大・加速すれば、ロシア軍はキエフ制圧などの「戦略的目標」を達成できないまま攻勢のピークが過ぎると予測する。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は13日、NBCテレビのインタビューで「ロシアの進軍を鈍らせるため対戦車や対空の戦力、弾薬などを(ウクライナ軍の)前線に届ける決意だ」と強調した。西部への攻撃を受けても武器供給を続ける意向を言明した。

米国はポーランドからウクライナへの戦闘機の供与に反対したが、武器供与を続ける方針を貫く。米ホワイトハウスは12日、2億ドル(230億円)相当の武器をポーランドに提供すると発表した。ジャベリンやスティンガーが念頭にある。

NATOは16日、ブリュッセルで国防相理事会を開き、ウクライナへの武器供与が主要テーマになる見通しだ。オースティン米国防長官はウクライナの隣国スロバキアも訪れる。スロバキアはウクライナが調達を目指す地対空ミサイル「S300」を保有しており、オースティン氏は供与を働きかける可能性が高い。

パベル氏はウクライナ西部への攻撃が激しさを増すと、米欧とロシアの軍事衝突の懸念が高まると話す。ロシア軍は軍事作戦で着弾点がぶれやすい無誘導兵器に頼らざるを得ないからだと指摘する。ロシア軍は精密誘導兵器の在庫が少ないとされる。

米軍は地対空ミサイル「パトリオット」をポーランドに配備している。ミサイルの着弾点がポーランド国境に近づくほど、パトリオットで迎撃する可能性が出てくる。ウクライナ領空で迎撃すればロシアが米欧の軍事介入とみなすシナリオが考えられる。

ポーランドとウクライナの国境付近の上空は米欧とロシアの双方が「領空侵犯」に神経質になりやすく、戦闘機の誤射リスクもある。ロシア軍がウクライナ西部で戦闘機を本格的に運用するようになると米欧とロシアの緊張が高まる。

米欧はロシアによる生物・化学兵器の使用も警戒する。ポーランドのドゥダ大統領は13日、英BBCのインタビューで大量破壊兵器の使用について「ゲームチェンジャーだ」と強調。NATOとして「実行すべき行動について真剣に考えるべきだ」と語った。NATOはウクライナで戦闘任務を実行しない方針だが、ロシアによる生物兵器使用が現実になれば軍事介入論が浮上する可能性がある。

バイデン政権はロシアとの緊張拡大の予防を目指す。米ロの国防当局は3月上旬、ウクライナ情勢をめぐる連絡ルートを構築した。米国防総省のカービー報道官は13日の記者会見で、1日に1~2回はルートが機能するかどうかを試し、複数回の例外を除いてロシアは応答しているという。

不測の事態が起きた場合に互いの意図や将来の行動を伝えて、緊張が一方的に高まる事態を避ける狙いがある。

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