バイデン氏、イスラエル訪問 新型防空兵器で協力探る

【エルサレム=中村亮】バイデン米大統領は13日、イスラエルを訪問した。米大統領の訪問は5年ぶりで、ラピド首相との首脳会談で安全保障や経済分野での緊密な連携を確認する。イランのミサイルやドローン開発に対抗し、イスラエルと新型防空兵器の開発で協力を探る。
バイデン氏は13日、大統領専用機でテルアビブ近郊の国際空港に到着した。空港での歓迎式典でバイデン氏は「イスラエルと我々の関係はかつてないほど深く、強くなっている」と強調した。パレスチナ問題にも言及し「近い将来ではないとわかっていても、解決策への私の継続的な支援について話し合う」と語った。バイデン氏が2021年1月の大統領就任後、中東を訪れるのは初めて。
バイデン氏は式典後、イスラエル政府から指向性エネルギー兵器システム「アイアンビーム」の開発について説明を受けた。同システムは高速で飛ぶミサイルやロケット弾に高出力のレーザー光線を照射し、破壊したり無力化したりする。
アイアンビームは1回の迎撃にかかる費用がわずか数ドルとされ、従来のミサイル防衛システムである「アイアンドーム」と比べて圧倒的に安い。親イラン系の武装勢力から大量のロケット弾で攻撃を受けると、高価なアイアンドームでは数量面で対応しきれず費用もかさむ弱点がある。イスラエルはアイアンビームの実戦配備に向けて米国に資金支援を求めるとみられる。
バイデン氏は14日、エルサレムでラピド氏との首脳会談に臨み、イランへの対応を協議する。トランプ前政権がイランの核関連活動を制限する国際枠組み「イラン核合意」を離脱し、イランは核合意の義務履行を相次いで停止した。イスラエルは懸念を強めており、バイデン氏は核武装を認めない方針を改めて伝える見通しだ。
バイデン政権はイランを共通の脅威と位置づけ、パレスチナ問題で対立してきたイスラエルとアラブ諸国の連携を後押しする。バイデン氏は10日付の米紙ワシントン・ポストに寄稿し「統合が進む中東こそが多くの点で米国に恩恵をもたらす」と強調。イスラエルとアラブの協力拡大が首脳会談での主要テーマの一つになるとの見方を示した。
14日にはイスラエルのネタニヤフ元首相とも面会する。ネタニヤフ氏はトランプ前大統領との親密さで知られ、パレスチナに強硬姿勢を貫いたことでバイデン氏が率いる米民主党のリベラル派から激しい批判を浴びた。バイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権が15年にイラン核合意を結ぶと、ネタニヤフ氏は反発して米国とイスラエルの関係が悪化した。
バイデン氏がネタニヤフ氏と面会するのは、イスラエル政局が流動化している事情がある。ラピド氏は前任のベネット氏の退任に伴って7月に首相に就いたばかりで、11月には総選挙を予定する。総選挙を受けてネタニヤフ氏が首相に返り咲くとの観測もある。バイデン氏はネタニヤフ氏にも目配りし、両国関係の安定が選挙結果に左右されないようにしたい考えだ。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)