米消費者物価 上昇けん引の住居費、民間指標では鈍化

【ニューヨーク=佐藤璃子】米労働省が13日発表した9月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.2%上昇し、市場予想を上回った。CPIの3割強を占める家賃など住居費の強い伸びがけん引した。一方、民間調査では住宅市場の減速が鮮明で、家賃の伸びも鈍化している。住宅市場の動向がCPIに反映されるには数カ月の時間差があるとされ、市場参加者は住居費の見極めに苦慮している。
米国の賃貸物件の需要は2021~22年初にかけて盛り上がった。新型コロナウイルス禍の行動制限で在宅勤務が増えるなか、分譲住宅の価格は高騰。賃貸物件のニーズも高まった。米賃貸情報のアパートメントリストによると、全米の家賃(中央値)は21年に年間で18%近く上昇した。米不動産会社ビバルディ・リアルエステートのグイド・ポンピリ社長は「住宅ローン金利と価格の高騰で購入希望者が減り、賃貸物件を好む傾向が強くなった」と指摘する。
こうした過熱ぶりは足元で落ち着きつつある。不動産業者向けに物件の管理ソフトを提供する米リアルページによると、アパートなどの集合住宅では22年7~9月期に退去者が入居者数を大幅に上回った。米国では7~9月期は季節的に転居が多く、退去者と入居者がいずれも増加する傾向がある。7~9月期に差し引きの入居者数が減少するのは30年余りの調査で初めてという。
賃貸物件の需要は家賃や所得、経済の先行き見通しに左右される。インフレや景気減速への懸念がくすぶるなか、「消費者は様子見モードに入っている」(リアルページのジェイ・パーソンズ氏)との見方もある。
リアルタイムで市場動向を探る民間調査では、家賃の伸びはすでにピークアウトしている。物件情報を提供するリアルター・ドット・コムが全米50都市を対象にした調査によると、家主が提示した家賃の上昇率は9月に前年同月比で7.8%だった。伸び率は7月まで12%前後で推移していたが、2カ月連続で一桁台に鈍化した。他の調査でも家賃の伸び鈍化を示す指標が相次ぐ。

CPIは統計作成上、住居費の変化を反映するのに時間がかかるとされている。モルガン・スタンレーによると、家計調査を通して年間の家賃のデータを集めるCPIは最新の市場価格とは異なる場合が多いという。LPLファイナンシャルのクインシー・クロスビー氏は「現時点での家賃の動きがCPIに反映されるまで数カ月かかる。鮮明な鈍化傾向が出るのはより先になるだろう」との見方を示した。