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米・イスラエル首脳「イラン核保有許さず」 共同宣言

(更新)

【エルサレム=中村亮】バイデン米大統領は14日、エルサレムでイスラエルのラピド首相と会談した。イランによる核兵器保有の阻止を柱とする共同宣言に署名した。イランへの対抗を念頭にイスラエルとアラブ諸国の協力を進める方針も盛った。米国は中東への関与を薄め、中国への対応に重点を移す布石とする考えだ。

共同宣言に「米国はイランによる核兵器取得を絶対に許さないと強調する。この結果を確実にするため国力のあらゆる要素を使う用意がある」と明記した。イスラエルのミサイル防衛強化に向けた追加の資金支援を検討するとした。

バイデン氏は13日放映のイスラエルメディアのインタビューで、イランの核武装を阻止する「最後の手段」として武力行使の可能性に触れた。バイデン氏がイランに対する軍事行動に言及するのは珍しい。

ラピド氏も14日の共同記者会見で「(イランの核保有を止める)唯一の方法は核計画を進めれば自由主義諸国は武力を使うと知らしめることだ」と話した。

従来の方針であるイランの核保有に反対する方針を共同宣言で改めて確認する背景には、イランの脅威が一段と高まったとの認識がある。米国のトランプ前政権はイランの核関連活動を制限する国際枠組み「イラン核合意」を離脱。イランも核合意の義務履行を相次いで停止した。バイデン政権は米国の復帰を目指し、核合意の再建交渉に着手しているが進展は乏しい。

国際原子力機関(IAEA)は5月、イランが60%まで濃縮したウランの貯蔵量が5月15日時点で推定43.1キログラムになったと発表した。2月調査時から3割増えた。核合意では濃縮度の上限は3.67%と定める。核兵器に転用可能とされる90%に近づく。

米政権が推進するイラン対策の一つが、パレスチナ問題で対立してきたイスラエルとアラブの協力拡大だ。共同宣言は「米国はイスラエルと全ての地域のパートナー国の絆を深めたり、イスラエルの地域統合を推進したりする方針だ」とうたった。

イスラエルは2020年、トランプ政権の仲介のもとでアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンなどアラブ4カ国と国交正常化に合意し、共通の脅威とみなすイランに対する防衛協力の余地を広げた。

イスラエルはUAEと21年、国営の防衛企業同士が無人水上艦の共同開発に合意した。22年に入り、イスラエルメディアは同国が強みを持つ対空防衛システム「アイアンドーム」をUAEに売却する交渉に入ったと報じた。米メディアによると、イスラエルはバーレーンへのドローン供与で合意した。

焦点は湾岸アラブ諸国をたばねるサウジアラビアとイスラエルの関係改善だ。バイデン氏は記者会見で、15日のサウジとの首脳会談に触れて「素晴らしい可能性があると伝える」と言及。イスラエルとの協力拡大を働きかけると言明した。サウジとイスラエルは両国を結ぶ航空機の直行便の開設を協議しているとされる。時間をかけて協力分野を拡大していく可能性はある。

対イラン包囲網が狭まるほど、核合意をめぐる交渉でイランが不利になるとの見方がある。核合意の関係国は6月末、再建交渉を3カ月ぶりに再開した。イランはバイデン氏が中東を訪れて自国の包囲網が強まる前に、交渉に前向きな姿勢を示して圧力を和らげようとしたとの指摘があった。

米ハドソン研究所のリチャード・ワイツ上級研究員は「イランが公然と核開発やイスラエルへの攻撃に踏み切らない限り、米国はイランへの対抗を地域に任せる」と分析する。イスラエルとアラブ諸国の協力拡大を後押しするのは中東防衛を地域の友好国に委ね、米国は中国との競争が激しくなるインド太平洋地域に軍や予算を重点配分する構えだとみる。

米国内ではキリスト教福音派の有権者の多くがイスラエルの安全保障を重視する。福音派は野党・共和党の支持基盤だが、バイデン政権がアラブ諸国との協力を仲介してイスラエル安保への貢献を訴えれば11月の中間選挙で少しでも多くの票を与党・民主党に集められる可能性はある。

中間選挙では民主党が上下両院の多数派を維持するのは難しいとの見方が広がる。

一方、最も機微に触れる防衛分野でアラブ諸国やイスラエルが協力を深めるのは容易でなく、米政権の思惑通りに進むかどうかは不透明だ。トランプ前政権は「中東版の北大西洋条約機構(NATO)」構想を掲げてテロ対策をアラブ諸国に委ねようとした。だが、各国の利害が複雑に入り組み、相互不信も根深く、目立った進展はなかった。

イランを国際社会から完全に孤立させるのも困難だ。ウクライナ侵攻を続けるロシアのプーチン大統領は19日、イランを訪問すると報じられた。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はイランがロシアにドローンを提供する可能性があると言及した。両国は米国への対抗を軸に、関係を深めているとみられる。

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