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「ロシアはウクライナ海上物流の寸断狙う」 元米軍高官

米国の駐欧州陸軍の元司令官ベン・ホッジス氏

(更新)

ウクライナ情勢が緊迫化するなか、米国の駐欧州陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏はロシアは大規模侵攻ではなく、限定的な軍事作戦で物流網を寸断してウクライナ経済に打撃を与える可能性が高いとの見解を示した。ホッジス氏の見方は以下の通り。

「ロシアはウクライナ周辺で大蛇のように振る舞って圧力をかけ、ウクライナが驚いてロシアの要求に応じると期待している。西洋諸国が新たな攻撃を避けるために譲歩することを望む」

「ロシアが緊張緩和を望んでいる兆候はない。最近のロシアの揚陸艦の動きがその事例だ。地中海からダーダネルスやボスポラス両海峡を越えてウクライナが面する黒海へ真っ先に入った。黒海に入るのを少しでも待てば対話を志向していることを示す絶好の機会だった。ロシアはそれが何を意味するかを知りながらブレーキを踏まなかった」

「ただ私は大規模な侵攻が起きるとは思わない。ロシアが望んでいないし、それを持続的に実行する戦力を整えていない」

「ウクライナ首都のキエフ制圧に向けて大規模な攻撃を実行する戦力も思いもない。第2次世界大戦下の1943年、旧ソ連がドイツからキエフを奪還するために反撃した際には70万人を動員し、キエフを包囲して制圧するのに1カ月かかった。(現時点でロシア軍はウクライナ周辺に10万人規模とされるため)キエフ制圧は現実的ではないように見える」

「可能性が高いのは黒海やアゾフ海の海岸線に沿って攻撃を仕掛ける作戦だ。ロシアは複数の上陸作戦を実行する可能性がある。ウクライナを横断したり、中心部を攻略したりするよりも犠牲者をあまり多く出さず、はるかに持続可能性がある。私の見立てでは作戦失敗のリスクが低い」

「海岸線に攻撃を仕掛けて、ウクライナによる黒海やアゾフ海へのアクセスを遮断すればウクライナ経済に大打撃を与えられる。ウクライナ経済は農産品や鉄鉱石などの輸出に依存しているからだ。アゾフ海の港湾都市であるマリウポリやベルジャーンシク、黒海のオデッサに民間船がアクセスできなければウクライナ経済は崩壊する。それがロシアによる戦略的計画の一部だ」

「一方でロシアがオデッサに向けて上陸作戦を仕掛けるかどうかはわからない。ロシアは全ての欧州諸国がロシア制裁を実行しないように一定の段階で軍事行動に歯止めをかけるだろう。大都市であるオデッサを武力制圧すればロシアと経済関係が強いドイツやイタリアなども制裁を実行せざるをえないと思う」

「上陸しなくてもオデッサを崩壊させられるだろう。(物流システムなどに対する)サイバー攻撃といった手段で海上物流の流れを制限して混乱させられる。必ず制圧しなければいけないわけではない」

「ウクライナ侵攻後、米欧がウクライナ向けの軍事物資を空輸するのはリスクがある。ロシアが偶発的または意図的に撃墜することに懸念は大きい。この場合は誰もが回避したい米軍とロシア軍の衝突になる」

「米国はロシアの侵攻後、ウクライナに配置されるロシアの防空システムを遮断する手段を含め、あらゆる可能性を精査をするだろう。輸送ルートを陸上輸送や鉄道輸送に切り替える可能性も高い」

「ロシアが新たな攻撃を仕掛けたら、その実態を把握するための(無人機などによる)米欧の情報収集活動の必要性が増す。撃墜リスクはあるが、情報収集を続けることを望む。ウクライナ侵攻があれば米政権はすべての関係国にロシアへ経済制裁を科すように求める。各国を納得させる手段の一つがロシアの行動について証拠を示すことだ」

「ロシアがウクライナに対して新たな攻撃に踏み切れば、外交努力や米欧の脅しによる抑止が失敗したことになる。中国共産党指導部はこのことを記憶し、台湾や南シナ海に関する米国の意見にあまり耳を貸さなくなるだろう」

(聞き手はワシントン=中村亮)

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