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Microsoft、音声AI老舗2.1兆円で買収 医療クラウド強化

(更新)

【シリコンバレー=佐藤浩実】米マイクロソフトは12日、音声認識技術を手掛ける米ニュアンス・コミュニケーションズを197億ドル(約2兆1500億円)で買収すると発表した。同社が強みを持つ病院や医師の顧客基盤と人工知能(AI)技術を手に入れ、ヘルスケア分野のクラウドサービスを強化する。

ナスダック市場に上場するニュアンスの株式を1株あたり56ドルで取得する。前週末の株価に23%上乗せした。負債の引き受けを含め197億ドルの買収規模で、2021年中に手続きを終える。マイクロソフトのM&A(合併・買収)としては、262億ドルを投じたビジネスSNS(交流サイト)の米リンクトインに次ぐ規模となる。

ニュアンスは東部マサチューセッツ州で、約20年にわたり音声AIを手掛ける老舗だ。米アップルの「Siri」の基礎技術の開発で知られ、書き起こしソフトなどを販売している。近年は事業を売却・整理して医療業界向けのサービスと、金融機関や通信会社などへの技術提供に集中する戦略を進めていた。

ニュアンスによれば世界で1万の医療機関と50万人以上の医師が同社のサービスを利用し、米国の病院の利用率は77%に上るという。20年9月期の通期売上高は14億7889万ドルで、純利益は2139万ドルだった。マイクロソフトの売上高は20年6月期に1430億ドルで、12月末時点で1319億ドルの手元資金があった。

両社は医療分野のAI活用で約1年半にわたり提携し、医師と患者の問診時の会話を聞き取って文書に自動記録したり、ビジネスチャットの「Teams(チームズ)」を使う遠隔診断にニュアンスの音声AIを組み込んだりしてきた。協業を通じて、20年12月ごろから買収交渉が始まった。

マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は12日の電話会見で「AIは最も重要な技術で、ヘルスケアは最も緊急性が高い用途だ」と買収の意義を強調した。クラウドを介してAI技術を提供することで、医師らが文書作成などの事務作業にかける時間を減らし、医療の質を高められるとみている。

米アマゾン・ドット・コムなどとの競争が激しいクラウド事業を強化するため、マイクロソフトは20年ごろから業種ごとに必要なサービスをそろえて提供してきた。ヘルスケアは特に注力している分野で、医療関連の音声AIに強いニュアンスの買収により想定市場規模は2倍の5000億ドルになるという。

AIをめぐっては米グーグルやアマゾンなどIT(情報技術)大手が研究やサービス開発にしのぎを削っている。自然言語処理(NLP)と呼ぶ分野の研究が盛んで、マイクロソフトも自社開発を進めたり、研究企業の米オープンAIに出資したりしている。ニュアンスは音声認識で約2700の特許を持ち、AI技術の強化にもつなげる。

マイクロソフトは20年夏に、当時のトランプ政権が問題視した動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業買収に名乗りを上げた経緯がある。3兆円規模と予想されたが成立せず、その後もM&Aの機会を模索していた。

企業向けの事業が主体の同社は消費者との接点を増やすため、写真共有サービスの米ピンタレストや音声チャットの米ディスコードなどに接触してきた。ただ主力事業のクラウドで着実に相乗効果を出せるニュアンスの買収を優先したようだ。

米国では議会や規制当局がIT大手の大型買収への監視を強めている。マイクロソフトは今回の買収は反トラスト法(独占禁止法)に抵触しないと見ているが、M&Aへの積極姿勢は当局の警戒を招く可能性もある。

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