チリ議会、TPPを承認 大統領署名には時間も

【サンパウロ=宮本英威】南米チリの上院は11日、環太平洋経済連携協定(TPP)締結を賛成多数で承認した。下院は2019年4月に通過しており、議会の手続きを終えた。3月に就任した左派のボリッチ大統領は大統領選でTPPの批准に慎重な姿勢を示しており、署名には時間がかかる可能性がある。
チリでは19年10月、格差是正を求めるデモが拡大し、TPPを巡る上院審議が停滞していた。議会手続きが終わり、ボリッチ氏の署名が残る手続きとなったが、同氏は9月、「TPPは政府の計画に入っていない」と発言している。地元メディアによると、同氏が下院議員だった際にTPPの承認に反対票を投じた。政府は企業が政府を相手取って国際機関に仲裁を申し立てられるISDS(投資家と国家の紛争解決)条項を疑問視する。
経済界にはTPPの批准を求める声が多い。経済団体の生産商業連盟(CPC)のフアン・スティル会長は「国の発展にとって重要な協定だ」と述べ、早期の承認を呼びかけていた。
ボリッチ政権発足前のチリは、自由貿易に積極的な国として知られ、中南米諸国のなかで屈指の自由貿易協定(FTA)網を持つ。TPPの前身となったFTAに参加していた4カ国の1つで、日本やオーストラリアなどと共にTPPに署名した11カ国に含まれている。