ウォルマート、フィンテックで新会社 金融商品を開発

【ニューヨーク=白岩ひおな】米小売り最大手ウォルマートは11日、手数料無料の株式取引アプリ「ロビンフッド」や暗号資産(仮想通貨)関連企業に投資するリビットキャピタルと共同で、フィンテックを手がけるスタートアップを立ち上げると発表した。顧客や従業員向けの手ごろな金融商品を開発する。サービスの成長に向け、他のフィンテック企業との提携や買収を検討する方針も明らかにした。
フィンテックの新会社はウォルマートが株式の過半を所有する。取締役会のメンバーにはウォルマートのブレット・ビッグス最高財務責任者(CFO)や米国部門CEOジョン・ファーナー氏、リビットキャピタルのマネージングパートナー、マイヤー・マルカ氏が名を連ねるほか、金融業界に詳しい独立した専門家も指名する。
ジョン・ファーナー氏は「何百万人もの顧客が買い物だけではなく金融の分野でも多くのサービスを望んでいる」と立ち上げの理由を語った。リビットキャピタルのマイヤー・マルカ氏は「テクノロジー主導の金融ビジネスの知識とウォルマートの使命や顧客層を組み合わせれば、他に類を見ない金融サービスを作れる」とコメントした。
新会社の名称や、サービスの開始時期といった詳細は明らかにしていない。発表を受け、ウォルマートの株価は時間外取引で一時2%超上昇した。
全米に4700以上の店舗を持つウォルマートは、小切手の現金化や請求書の支払い、送金など複数の金融サービスをすでに手がけている。信用履歴や最低残高などの問題で銀行をはじめとする従来の金融機関やクレジットカードを使用できなかったり、予算が限られたりする顧客にも使いやすい代替サービスが特徴だ。
お金を入れて購入に使用できるデビットカード「マネーカード」もその例だ。店内やオンラインの買い物時のキャッシュバック、雇用先に登録することで通常よりも早く給与を受け取れる仕組みなどを備える。買い物客がすぐに商品を購入して分割払いできるオンラインの代替支払いサービス「クラーナ」などもある。
米連邦準備理事会(FRB)によると成人の6%は当座預金口座や普通預金口座、マネーマーケット口座を持っていない。約16%は銀行サービスを十分に利用できず、代替金融サービスを併用している。こうした人々は短期の資金難から給料を担保にした高金利のペイデイローンなどに頼る可能性も高くなる。
2012年に設立された投資会社リビットキャピタルはこれまで、手数料無料でミレ二アル世代の若者や投資初心者など個人投資家の人気が高まっている株式取引アプリ「ロビンフッド」のほか、今すぐ購入して後で支払うといったサービスを提供するフィンテック企業の米アファームに投資してきた。ウォルマートはリビットキャピタルと組んだ金融サービスで、代替手段を求める顧客の需要を開拓する狙いがあるとみられる。