米消費者物価、6月9.1%上昇 大幅利上げの予想強まる

【ワシントン=鳳山太成】米労働省が13日発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の伸び率が9.1%だった。ガソリン高や堅調な雇用環境を背景に、物価の伸びが頭打ちになる兆しは見えない。指数公表後、米市場では米連邦準備理事会(FRB)が7月にも大幅な利上げをして、物価高の沈静化を図るとの見方が強まった。
米国民の不満が高まるなか、物価動向は11月に中間選挙を控えるバイデン政権の命運を握る。バイデン米大統領は13日、CPIの発表を受けた声明で、6月中旬以降のガソリンの値下がりが反映されていないとして「許容できないほど(伸び率は)高いが、古い数字でもある」と強調し、政権批判への予防線を張った。
6月の伸び率は5月の8.6%から拡大し、市場予想の中央値(8.8%)を上回った。1981年11月(9.6%)以来、およそ40年半ぶりの高い伸びだ。足元の動向をより反映する前月比の上昇率は1.3%と、5月の1.0%を上回った。
物価の基調を見るために変動の大きい食品とエネルギーを除く指数については、前年同月比5.9%上昇した。3月に6.5%を記録した後に3カ月連続で減少した。前月比でみた伸び率は0.7%と5月(0.6%)から拡大した。
物価高をけん引するガソリンの上昇率は6月に59.9%となり、5月から10ポイント以上拡大した。全米自動車協会(AAA)によると、レギュラーガソリンの全米平均価格は6月14日に1ガロン(約4リットル)あたり5.016ドルと過去最高を記録した。
夏の旅行シーズンが本番を迎えており、航空運賃も34.1%と高い伸び率が続く。食品や住居費もそれぞれ10.4%、5.6%と伸びが5月から拡大した。
生鮮食品やガソリンなど生活に身近な商品の値上がりが収まらなければ、消費者はインフレが落ち着くとは感じにくい。
ニューヨーク連銀の6月の家計調査によると、1年先の期待インフレ率は6.8%と過去最高を更新した。一方、3年先の期待インフレ率は3.6%と、前月の3.9%から下落した。
FRBは26~27日、米連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。金融先物市場では6月のCPI発表を受け、前回会合に続いて0.75%の大幅利上げを決めるとの予想が6割に低下した。利上げ幅を1.00%に拡大するとの予想が前日の1割弱から4割に急上昇した。
FRBのパウエル議長はインフレ対策を最優先課題に掲げており、物価上昇率がピークを迎えるかどうかを金融政策の判断材料に挙げる。市場が注視する9月以降の利上げのペースに影響する。
物価上昇率が高止まりすれば、FRBが急速な利上げに動くとの警戒感は根強い。過度な金融引き締めは景気後退のリスクを高めるため、金融政策の運営は一段と難しくなっている。
インフレ圧力が弱まる動きもある。6月の雇用統計によると、民間部門の平均時給の伸び率は前年同月比5.1%と、3カ月連続で鈍った。労働市場では人手不足が続いているものの、賃上げが緩やかになれば物価上昇の圧力は和らぐ。
ロシアのウクライナ侵攻で上昇した原油相場も変わりつつある。金融引き締めなどによる世界景気の減速懸念が広がり、米国の原油先物は6月上旬をピークに下落傾向にある。足元は節目の1バレル100ドルを下回り、ガソリンも値下がりの兆しがある。
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