CSIS「中国は台湾制圧失敗」 独自机上演習、日米に損失

米戦略国際問題研究所(CSIS)は9日、中国軍が2026年に台湾へ上陸作戦を実行すると想定し、独自に実施した机上演習(シミュレーション)の結果を公表した。大半のシナリオで中国は台湾制圧に失敗したが、米軍や自衛隊は多数の艦船や航空機を失うなど大きな損失を出す結果となった。
CSISは①台湾が中国に強く抵抗②米軍が即座に参戦③日本が米軍による国内基地の使用を容認――などの条件を「基本想定」と位置づけた。この想定で実施した3回の演習のうち2回で中国軍は台湾の大都市を制圧できず、物資補給が10日間で途絶した。
残る1回の演習では中国軍が台湾南部に上陸して台南の港湾を支配したが、米軍の空爆で港湾は使えなくなり3週間ほどで態勢を維持できなくなった。CSISはこのケースについて「決定的な中国の敗北と判断されないが中国に不利な膠着状態だ」と分析した。
米軍は戦闘で原子力空母2隻、ミサイル巡洋艦などの艦船7~20隻、航空機168~372機を失った。自衛隊は中国から攻撃を受けた場合に参戦し、100機以上の航空機を破壊された。
CSISは台湾防衛をめぐり「オーストラリアや韓国などの同盟国も何らかの役割を果たすかもしれないが要は日本だ」と指摘。「日本の米軍基地を使えなければ米国の戦闘機などは効果的に戦闘に参加できない」と警鐘を鳴らし、日本と外交・防衛協力を深めるべきだと提言した。
「ウクライナモデルは台湾に通用しない」とも分析した。ロシアが侵攻を続けるウクライナで米軍は戦闘任務を実施していないが、CSISは台湾有事について米国が台湾防衛を決めれば即座に戦闘を始める必要があると強調した。
中国軍は上陸作戦と並行して台湾向けの物流を寸断する可能性があり、米国の参戦が遅れるほど台湾は物資不足に陥り、戦闘で不利になる公算が大きい。米軍が介入せずに台湾が単独で戦うケースの演習では中国が勝利する結果になっている。
CSISは机上演習の結果を踏まえ、米国は長射程の対艦巡航ミサイルの在庫を増やすべきだとも訴えた。台湾に向かう中国の艦船を遠方から攻撃できるほど米軍の損失を抑えやすくなるからだ。