メリーランド州、全米初のネット広告税 州議会が決議
【シリコンバレー=白石武志】米東部メリーランド州議会が全米初となるネット広告税の導入を決めた。同州におけるバナー広告や検索連動型広告などのネット広告サービスの売り上げに課税する。欧州各国で広がりつつある「デジタルサービス税(DST)」に似た仕組みで、米国でも州政府が導入することになる。
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「HB732」と呼ぶメリーランド州の税制改正関連法案に、全米初となるネット広告税の制度が盛り込まれた。地域経済への影響を懸念するホーガン州知事(共和党)は2020年にいったん成立した関連法案に拒否権を発動したが、民主党が多数派を占める州議会は12日までに拒否権を無効にする決議を終えた。ただ、専門家からは同法案が合衆国憲法や連邦法に抵触するおそれが指摘されており、導入にはなお曲折がありそうだ。
米メディアによると、新税は州内の消費者に表示されるネット広告からの収益に課税される。税率は2.5~10%。対象企業の世界全体の年間売上高に応じて異なる。
世界全体の年間売上高が150億ドル(約1兆5700億円)を超える場合に10%の最高税率が課され、グーグルやフェイスブックなどの米ネット広告大手が対象となる見通しだ。課税分がネット広告サービスの代金に上乗せされた場合、最終的な負担は広告主や消費者に転嫁されることになる。
グーグルやフェイスブックなどのネット企業でつくる業界団体の米インターネット協会は12日、メリーランド州議会の決定について「健全な公共政策よりも政治的な芝居を選んだことは残念だ」との声明を出した。「この問題については裁判所が最終決定権を持ち、政治ではなく法律が結果を決める」とも強調した。
ネット広告サービスの売上高などに課税する手法は欧州各国で広がりつつあり、米国でもニューヨーク州議会などで法制化を目指す動きがある。ただ、新型コロナウイルスの影響で中小のメーカーや小売店、飲食店はオンライン販売やネット広告への依存を強めている最中だ。業績好調なネット広告業界に新たな財源を求める試みが、経済回復を遅らせるとの懸念もある。