G7、ロシアの最恵国待遇取り消し 追加制裁で共同声明

【ワシントン=鳳山太成】米欧日など主要7カ国(G7)は11日出した共同声明で、ウクライナへの侵攻を続けるロシアに新たな経済制裁を科すと表明した。ロシアからの輸入品に大幅に高い関税を課すほか、高級品の対ロ輸出も禁じる。国際協調でプーチン政権への圧力を一段と強める。
声明は「主要製品でロシアに『最恵国待遇』を与えない措置を講じるよう努める」と記した。各国・地域は世界貿易機関(WTO)ルールに基づき、ロシア製品に他国と同じ低い関税を課してきた。最恵国待遇を取り消せば、大幅に高い関税をかけられる。

G7は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行、欧州復興開発銀行(EBRD)によるロシアへの融資を阻止することでも協力する。
プーチン大統領の側近や関係が近い大富豪への制裁を強化するほか、重要製品や技術、高級品が渡らないよう貿易を規制する。暗号資産(仮想通貨)などを使って制裁を回避しないよう監視を強める。
バイデン米政権は11日、最恵国待遇の取り消しなど米国の追加策を発表した。バイデン大統領はホワイトハウスで演説し「世界経済の半分を占める国・地域の共同措置により、ロシアにさらに圧倒的な打撃を与える」と述べた。
与党・民主党のペロシ下院議長は11日、来週にロシアとの貿易関係を見直し最恵国待遇を取り消すための法案を採決すると表明した。野党・共和党でも賛同の声が上がっており、早期に実行に移す可能性がある。
バイデン政権はロシアと、侵攻に協力したベラルーシへの高級品の輸出も禁じた。自動車や宝石、衣類、たばこ、アンティーク品などを対象に含めた。年5億5000万ドル(約640億円)の輸出に相当する。
輸入を禁じるロシア製品の対象も広げた。これまでの原油や石炭に加え、魚介類やウオッカ、ダイヤモンドなどロシアの主力産業を新たに標的にした。10億ドルを超えるロシアの輸出収入を断つという。
ロシア第2位銀行のVTBバンクの経営幹部のほか、ペスコフ大統領報道官の妻子を制裁対象に加えた。親ロ派武装勢力が実効支配するウクライナ東部を国家承認するよう働きかけたロシアの議員の資産も凍結する。
欧州連合(EU)の欧州委員会も11日、ロシアへの最恵国待遇を取り消すと発表した。高級品をロシアに輸出することを禁じるほか、ロシアの主力輸出品の一つ、鉄鋼製品をEUに輸入するのをやめる。
カナダのトルドー首相は11日、ロマン・アブラモビッチ氏らロシア人の富豪5人とロシアの32の軍事関連団体を新たな制裁対象に加えると発表した。プーチン大統領と近いとされるアブラモビッチ氏はサッカーのイングランド・プレミアリーグの強豪チェルシーのオーナーとして知られる。
日米欧は2月下旬、ロシアへのハイテク製品の輸出を規制すると表明した。輸入品に高関税をかければ貿易量が一段と減り、同国経済を孤立させる。ロシアからの輸入を続ける日米欧企業のコストも増し、世界経済への悪影響も広がる。

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