Netflix広告付きプラン、2割安の790円 日本で11月導入

【シリコンバレー=佐藤浩実】米動画配信大手のネットフリックスは13日、広告を付けて料金を抑えたプランを11月に導入すると発表した。日本では月790円で、従来の最低料金と比べて2割安となる。物価高で消費者が支出の見直しを進めるなか、値ごろなプランを加えて会員のつなぎとめを図る。ネットフリックスが広告を取り入れるのは初めてで、事業モデルの転換点となる。
米国や日本、ドイツなど12カ国で始める。日本では既存の3種類の料金に加えるかたちで、11月4日から「広告つきベーシック」と呼ぶプランを選べるようにする。利用者の多い「スタンダード」(1490円)の半額近く、従来の最安だった「ベーシック」(990円)も2割下回るように設定した。既存プランの料金はいずれも据え置く。

広告付きプランでは、作品の開始前と途中に15~30秒の動画広告を流す。広告の分量は1時間の作品に対して4~5分で、シーンの切り替え時など視聴体験を阻害しにくいタイミングを選ぶという。日用品や自動車メーカーなど数百社が広告主に名を連ねており、視聴者が同じ広告ばかりを見ずに済むような制限も設ける。たばこや銃、政治に関わる広告は扱わない。
広告のない上位プランと異なり、端末に作品をダウンロードして視聴することはできない。制作会社などとの契約条件により、一部のコンテンツは見られなくなる。
ネットフリックスはこれまで、会員が払う料金で収益を得てきた。一方で、作品への投資を捻出するために値上げを重ねた結果、北米など競争の激しい市場では解約が目立つようになっていた。6月末時点の世界の会員数は2億2067万人で、2021年末と比べて約120万人減った。
広告を新たな収益源とすることで消費者に求める料金を抑え、既存のユーザーをつなぎとめたり、再加入を促したりする。米調査会社のモフェット・ネイサンソンは23年にネットフリックスの広告収入が10億ドル(約1470億円)になると予測している。
グレッグ・ピーターズ最高執行責任者(COO)は13日の説明会で「視聴者のニーズに応じて幅広い選択肢をそろえることが重要だ」と述べた。22年7月時点では23年の開始を目指していたが、経済の不透明感が強まるなかで前倒しを急いだもようだ。広告付きプランの導入に向けて22年7月に米マイクロソフトと提携したほか、同8月には米SNS大手スナップから広告の責任者を引き抜いて準備を進めていた。
米労働省が10月13日に発表した9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で8.2%上昇した。物価高が緩む気配が乏しいなかで、消費者は支出を精査するようになっている。米モーニング・コンサルトの今春の調査によると、米国の成人の57%が「広告が付いても安価な動画配信サービスのほうが良い」と答えている。韓国では64%、日本では37%が同様の回答をした。

消費者の嗜好の変化を反映し、競合他社も広告プランの導入に動いている。米ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの「HBOマックス」は21年から取り組んでおり、直近では米国の新規契約者の3割前後が広告付きを選んでいるもようだ。米ウォルト・ディズニーの「ディズニー+(プラス)」は22年12月に米国で始め、23年に米国外にも広げる計画を示している。
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