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中ロ対抗へ「新大西洋憲章」、米英が80年ぶり刷新 

民主主義に危機感

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大西洋憲章の写しを閲覧するバイデン米大統領とジョンソン英首相=AP

【コーンウォール(英南西部)=永沢毅】バイデン米大統領とジョンソン英首相が法の支配など民主主義の基礎となる価値の順守をうたった「新大西洋憲章」をまとめた。第2次大戦後の国際秩序を構想した旧憲章を80年ぶりに刷新し、新たに中国やロシアが代表する専制主義への対抗軸を打ち出した。両首脳の個人的な思いも作成を後押しした。

「大西洋憲章の約束を改めて確認し、今世紀の脅威にも言及している」。バイデン氏は10日の米英首脳会談後の演説で、新たな憲章についてこう説明した。

大西洋憲章は英国がナチスドイツと戦っていた第2次大戦下の1941年8月にフランクリン・ルーズベルト米大統領とチャーチル英首相がまとめた。領土の不拡大や民族自決など8項目で構成し、後の国連や北大西洋条約機構(NATO)の創設につながったとされる。両首脳は会談に際して大西洋憲章の写しを閲覧し、当時を振り返った。

新憲章も8項目からなり、民主主義の価値の順守、領土の一体性の尊重などを明記した。米政府高官は両憲章の共通点を「民主主義がベストな統治形態だと示すことだ」と語る。当時にはみられなかった21世紀の新たな脅威として、サイバー攻撃や気候変動への対応、テロ対策の重要性も打ち出した。

80年前に強く意識したナチスドイツに代わり、現在の米英が脅威とみるのは強権路線に傾斜する中国やロシアだ。「偽情報を使った選挙介入に反対する」「紛争の平和的解決で一致している」――。名指しはしていないが、今回の憲章には米大統領選への介入を繰り返すロシアや、台湾の武力統一を排除しない中国を意識した文言が並ぶ。

ジョンソン氏には米国との歴史的な同盟関係を持ち出し、欧州連合(EU)離脱後も国際社会での影響力を維持する狙いも透ける。英国は先にまとめた外交・安全保障の方針でインド太平洋地域への関与強化を打ち出した。中国を「唯一の競争相手」とみて包囲網の構築を急ぐバイデン政権はこうした動きを歓迎する。

両首脳が80年前の指導者にそれぞれ投影する思いも新憲章につながったことは想像に難くない。ジョンソン氏はチャーチル氏を敬愛し、ロンドン市長時代の2014年に伝記を出版している。新聞記者から政治家に転じた点も共通している。

新型コロナウイルスで傷ついた米経済の回復に向けて巨額の財政出動に動くバイデン氏もルーズベルト氏の存在を強く意識する。同氏は大規模な公共投資を柱とする「ニューディール」で世界大恐慌下の米経済を復調に結びつけた。

バイデン氏は執務室にルーズベルト氏の肖像画を掲げている。大統領に就任して初めての議会演説で唯一言及した歴代大統領の名前もルーズベルト氏だった。

ジョンソン氏はトランプ前米大統領との親交は深かったものの、バイデン氏との関係が疎遠だったというのは英政界で一致する。バイデン氏はかつてジョンソン氏を「身体的にも精神的にもトランプ氏のクローン」と呼んだ。ただ、温暖化対策の推進や経済対策など政策面では考え方は遠くない。新憲章が不仲説を拭うにとどまらず、歴史にその名を刻む重みを持つのかを各国は注視している。

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