海外メディア「安倍元首相の遺産」 自民が参院選大勝

【シリコンバレー=佐藤浩実、ソウル=甲原潤之介】海外メディアは10日投開票の参院選の結果を相次ぎ伝えた。自民党の大勝は、8日に銃撃を受けて死去した安倍晋三元首相の「遺産」と指摘する報道が目立った。安倍氏が目指した憲法改正の論議が進むとの見方を示す記事も多かった。
AP通信は「岸田文雄首相は長期的な政策目標に取り組めるようになる」と分析した。具体例として、岸田氏が「新しい資本主義」と呼ぶ経済政策や安全保障のほか、安倍氏が目指してきた憲法改正をあげた。
APは安倍氏の殺害により、今回の参院選は「新たな意味を持った」と指摘した。自民党に対する「同情票」を集めたとの見方を示したほか、多くの候補者が言論の自由の重要性を強調し、民主主義に対する暴力に屈しないと掲げた点に触れた。
米ニューヨーク・タイムズは「安倍氏の遺産は、投票所での有権者の選択と自民党の将来像を形作った」と指摘した。岸田氏が「私には安倍氏の考えを引き継ぐ責任がある」と述べたことを紹介した。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は「平和主義の憲法を改める歴史的な機会になる」と言及した。米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)も「安倍氏が目指した憲法改正が自民党の勝利によって近づいてきた」と報じた。
米ワシントン・ポストは円安やインフレ、エネルギー価格の高騰といった岸田政権が抱える課題に言及した。岸田政権が「国内での圧力にさらされている」と指摘した。
韓国の新聞各紙は1面で、憲法改正に前向きな「改憲勢力」が3分の2を確保したことを中心に伝えた。東亜日報は社説で「日本政界の急速な右傾化につながる」と指摘した。安倍氏の死去に触れ「彼に対する追慕の動きは改憲に好意的な世論をつくる可能性が高い」と記述した。
中央日報は安倍氏の死去により韓国に対し強硬姿勢だった安倍派の声が強くなり、短期的に日韓関係の改善機運に影響を与えると憂慮した。一方で「関係改善に積極的な岸田首相が自分の色をだす力量を強めれば、中長期的には韓日関係に青信号がともる」と期待した。
中国共産党の機関紙、人民日報(電子版)は岸田氏が憲法改正案の早期の発議に意欲を示したと伝えた。

2022年夏の参議院選挙(6月22日公示・7月10日投開票)は岸田文雄首相にとって事実上、初めて政権運営の実績が評価される場となりました。開票結果やニュース、解説などをお伝えします。