米仮想通貨大手コインベース1~3月、上場後初の赤字に

【ニューヨーク=宮本岳則】米暗号資産(仮想通貨)業界の最大手、コインベース・グローバルが10日発表した2022年1~3月期決算は、最終損益が4億2965万ドル(約560億円)の赤字(前年同期は7億7146万ドルの黒字)だった。21年の上場以来、四半期で赤字に転落したのは初めて。ビットコインなど主要仮想通貨の相場低迷で、個人投資家の売買が減少した。
個人の月間取引利用者は920万人となり、21年10~12月期の1140万人から減った。総取引高も前四半期比4割減の3090億ドルにとどまった。コインベースは「株主への手紙」で「こうした市況は永続的なものではないと信じており、長期的な視点に立ち続けている」と強調し、デジタル資産である非代替性トークン(NFT)など次世代技術・サービスに投資を続けると述べた。
ビットコインの価格は下落している。10日に一時3万ドルを下回り、21年11月につけた過去最高値(6万9000ドル)の半値以下となった。米連邦準備理事会(FRB)による利上げ加速と景気減速懸念で、投資家がリスク回避に動いており、ビットコイン市場から投機的なマネーが流出している。コインベースの収益は取引ごとに徴収する手数料に依存しており、相場に業績が左右されやすい。
コインベースは21年4月、米国の仮想通貨交換所として初めて株式公開を果たした。初値を基に計算した時価総額は759億ドルに達し、米ペイパル・ホールディングスやビザなど米電子決済大手の上場時の時価総額を上回った。規制上、仮想通貨に直接投資しにくい機関投資家などの期待を集めた。日本を含む世界で事業を展開し、三菱UFJフィナンシャル・グループも出資する。
もっとも上場後の株価はほぼ右肩下がりとなった。10日時点の時価総額は158億ドルにとどまり、上場時から8割減った。日本のマネックスグループは、暗号資産のコインチェック(東京・渋谷)を特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて、米ナスダックに上場させようとしている。コインベース株の低迷は、コインチェック上場にも逆風となる。
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