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米インフラ法案財源、仮想通貨の課税強化で3兆円捻出

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【ニューヨーク=宮本岳則】米議会上院が10日、1兆ドル(約110兆円)規模の超党派インフラ投資法案を可決した。財源の一つに位置づけるのが暗号資産(仮想通貨)取引に対する課税だ。今後10年間で280億ドル(約3兆円)の税収を見込む。課税強化に向けて、規制・監督体制の整備が進みそうだ。

同法案では増税に反対する共和党との合意を優先し、企業増税で財源を賄う政権の構想を見送った。政権や議会が目をつけたのが仮想通貨取引だ。財務省が5月に公表した報告書では、富裕層の税金逃れに使われていると指摘していた。取引の監視を強化することで280億ドルの財源を捻出しようとしている。

法案では「他人に代わってデジタル資産の移転を実現するサービスに責任を持ち、定期的に提供する」事業者をブローカーと認定し、顧客の取引記録の報告義務を課した。内国歳入庁(IRS)は仮想通貨を「財産」と見なしており、売買によってキャピタルゲインを得た場合、課税の対象となる。IRSは仮想通貨交換所などから取引データを入手することで、税逃れの取り締まりを強化する。

仮想通貨業界からは「現行の文言はブローカーの定義があいまいだ」といった懸念が相次いだ。開発者やマイニング(採掘)業者のように投資家情報を入手できない事業者にも取引報告義務を課すことになりかねないと指摘、米仮想通貨業界の技術革新に悪影響を及ぼすとして法案の修正を求めた。

仮想通貨業界からの反発を受けて、共和党のパット・トゥーミー上院議員など一部の有力議員が文言の修正案を提出した。修正案は全会一致で承認される必要があったが、共和党議員の1人が反対に回ったため、時間切れとなった。9月に本格化する議会下院の審議に委ねられることになる。

仮想通貨業界は審議の過程で、米議員に対して積極的なロビー活動を行った。これまで一部の議員だけが仮想通貨に関心を持っていたが、今回のインフラ法案審議を機に一気に脚光を浴びることになった。米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長はかねて米議会に対し、規制・監督強化の必要性を訴えており、議論が進む可能性がある。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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