/

ロシア・ベラルーシ急接近 米欧、ミサイル誤射や核警戒

【ワシントン=中村亮】ロシアとベラルーシが軍事協力を急速に深めている。バイデン米政権はウクライナ向け軍事物資の輸送ルートの変更を迫られたり、ロシアがベラルーシに核兵器を配備したりするシナリオを警戒している。ベラルーシは米国の経済制裁を受けてロシアへ急接近した面があり、米国の誤算となった。

米国防総省のカービー報道官は10日のFOXニュースのインタビューで、ロシアのプーチン大統領について「(軍事作戦の)選択肢を増やし続けている」と主張した。ウクライナ周辺でのロシア軍部隊の増強が続き、ウクライナ侵攻のリスクが依然として高いと訴えた。

米国務省高官によると、ロシア軍は1月中旬ごろからベラルーシに部隊を派遣した。ベラルーシ軍との共同軍事演習を理由に3万人のロシア兵を派遣したとされる。10日に始まった大規模な共同演習では演習場5カ所、飛行場4カ所で戦闘機や戦車の訓練を実施していく。

米欧はロシアがウクライナ侵攻の拠点としてベラルーシを使うと警戒するが、ロシアとベラルーシの協力は米欧に対する直接の脅威にもなりうる。

ウクライナへ武器などの軍事物資を運ぶ米欧の航空機が危険にさらされる。ロシアは地対空ミサイル「S400」をベラルーシへ配備した。S400は敵国の航空機を一定の範囲内に近づかせない「接近阻止・領域拒否」と呼ばれる戦略を可能にする。射程250~400キロメートルとされ、ベラルーシ南部に配置するとウクライナ西方の上空を幅広くカバーできる。

米欧はウクライナ侵攻が始まっても同国へ軍事物資の提供を続ける構えだが、米国防総省で北大西洋条約機構(NATO)を担当したイアン・ブルゼズィンスキー氏は「S400が任務を複雑にする」と指摘する。戦闘下でロシアがS400の射程に入った米欧の航空機を誤射し、米欧が戦闘に巻き込まれるリスクを考慮しなければいけないからだ。

専門家からはリスク回避のため米欧は軍事物資の空輸を停止し、陸送に切り替える必要があるとの指摘がある。輸送のスピードが下がり、ウクライナに軍事力で勝るロシアへ優位に働く公算が大きい。米欧はウクライナに戦闘部隊を派遣しない方針で、物資提供がウクライナに対する数少ない軍事支援になっている。

過去には誤射の事例がある。2014年にはウクライナ東部で政府軍と親ロシア派武装勢力が戦闘を続けるなか、マレーシア航空機が撃墜された。オランダ当局はロシア製の地対空ミサイル「ブク」が使われたと結論づけた。当時は東部で軍用機の撃墜が相次いでおり、親ロシア派が民間機と認識できずに誤射したとの見方が目立った。

米欧に対するもう一つの脅威はロシア軍がベラルーシに駐留するケースだ。ポーランドやリトアニアは、バルト海に面したロシアの飛び地カリーニングラードとベラルーシの両方と陸続きのため、2方向からのロシア軍の動きに目配りする必要が出てくる。米国務省高官は1月中旬、記者団に対してロシア軍がベラルーシに核兵器を配備するシナリオにも懸念を表明した。

米国の在欧陸軍司令官を務めたベン・ホッジス氏はロシア軍のベラルーシ駐留について「ポーランドやバルト3国を極めて脆弱にする」と強調し、NATOは東欧防衛の大幅な強化を迫られるとみる。核兵器を配備した場合には「ロシアと経済関係が深いドイツを含めて強力な経済面の対抗措置が必要になる」とも話す。

ポーランドのラウ外相は2月上旬、米メディアのインタビューで「(ロシアの)ベラルーシでの軍増強は恒久的なようだ」と語った。ロシアは共同軍事演習後にベラルーシから撤収するとフランスに説明したとされるが、東欧諸国の懸念は根強い。

ベラルーシとロシアによる軍事協力の深化は、米欧が導いた面もある。ベラルーシのルカシェンコ大統領は20年8月の大統領選後、政権による選挙不正を訴える抗議デモを強引に抑えた。米欧は人権侵害などを理由にベラルーシへ相次いで経済制裁を科した。ルカシェンコ氏は後ろ盾としてロシアに頼らざるを得なくなり、従来の中立的な外交政策を放棄した。

新アメリカ安全保障センターによると米国は21年、ベラルーシの96個人・団体に制裁を科した。中国(100個人・団体)に次いで2番目に多い。ベラルーシ当局が21年5月に民間機を強制着陸させて反体制派メディアの創設者を拘束すると、米政権は国営企業9社に制裁を科した。欧州と連携し、ルカシェンコ政権を支援する企業や経営者も制裁対象に次々と指定した。

米ジョージタウン大のアンゲラ・ステント教授は「ロシアとベラルーシの協力深化のスピードがサプライズだ」と指摘する。20年8月の大統領選からわずか1年半で、ベラルーシがロシアの核兵器の受け入れに前向きな姿勢を示すほどロシア依存を深めたことが米国の誤算となり、ウクライナ情勢の混迷に拍車をかけている。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

ウクライナ情勢

ロシア軍がウクライナに侵攻しました。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。

■動く戦況地図  ■戦況  ■マーケット・金融への影響  ■ビジネスへの影響 

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン