米家計金融資産が最大に 3月109兆ドル、株高追い風

【ニューヨーク=後藤達也】米連邦準備理事会(FRB)が10日発表した資金循環によると、3月末の家計(非営利団体含む)の金融資産は109兆ドル(約1京2000兆円)と2020年末より4%増え、過去最多を更新した。株高で富裕層を中心に資産の価値が膨らんだほか、政府の現金給付により中低所得者層の資産も増え、消費回復の原動力となっている。

家計の持つ3月末の株式と投資信託の合計は約40兆ドルと20年末より8%増えた。米株価は2月に調整する場面があったものの、上昇基調を保ち、3月にも史上最高値を付ける銘柄が相次いだ。新型コロナウイルスの流行で株価が急落した1年前と比べると、株式・投信は64%も増えた。
日本の普通預金にあたる決済性預金(含む現金)が急増したのも1~3月の特徴だ。残高は3兆3550億ドルと20年末より16%増えた。政府は1月と3月にコロナ対策で国民への現金給付を実施した。一部は消費や株式投資に回ったものの、預金として持ち続ける国民も多いようだ。
米家計の懐が潤う中で、米個人消費支出は3月、4月と続けて過去最多を更新した。5月以降は現金給付の効果が弱まる可能性があるが、米経済再開が進む中、サービスを中心に強い消費が見込まれている。リフィニティブの集計では4~6月の実質経済成長率の市場予想は9.5%(年率)と高い伸びが見込まれている。
ただ富の格差は広がっている。FRBの昨年末時点の試算によると、所得階層で上位1%の米国民だけで、国民全体が持つ株式・投信の43%を握っている。株式保有の富裕層への偏りは年々拡大している。
失業率は徐々に低下しているものの、地域や業種によっては雇用情勢は不透明感はなお強い。医療や教育などの物価は上昇を続けており、低所得者層の不満が一段と強まる可能性もある。米政府がキャピタルゲイン課税の増税や低所得者への支援を打ち出す背景となっている。
家計の負債は17兆2430億ドルと20年末より1%増えた。住宅ローンの増加が影響している。