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Appleに課金制限緩和を命令 米地裁、事業モデルは容認

(更新)
アップル対エピックの訴訟の一審判決は「痛み分け」となった=ロイター

人気ゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズが米アップルを訴えていた訴訟の一審判決は「痛み分け」となった。10日、米連邦地裁はアップルのアプリ配信事業が独占にあたるとするエピック側の主張を退けた一方、課金ルールについては反競争的だとして見直しを命じた。今後、アプリ事業者の独自課金を使うユーザーが増えれば、年2兆円規模にのぼるアップルのアプリ配信事業に影響が出かねない。

訴訟の焦点は、アップルがアプリ配信市場のなかで独占的な立場にあるかだった。エピック側はアップルの「アップストア」は約10億人のユーザーを抱えながら、「iPhone」などのアップル製品内に閉じていて競争相手がいないと主張。アップルは他社製スマートフォンやゲーム専用機などを含むより広い市場の範囲で競争が行われていると反論していた。

判事はどちらの主張にも同意せず、関連市場の範囲を「デジタルモバイルゲーム取引」と定義した。この定義に基づくアップルの市場シェアは55%以上に達し、高い利益率を享受していることも認めた。そのうえで「これらの要素だけで連邦法である反トラスト法(独占禁止法)違反を示すことにはならない」とも指摘し「エピックはアップルが違法な独占企業であることを証明できなかった」と結論づけた。

地裁の判断について競争法に詳しい植村幸也弁護士は「反トラスト法では独占的地位にあるかないかが決定的に重要だ。アップルが独占的地位にないと地裁が判断した時点で、アプリ事業者から手数料をとるなどの規約が反トラスト法上違法だと判断される可能性は事実上なくなった」と話す。

アップルは自社の課金システムを介してアプリ事業者から15~30%の配信手数料をとっているが、今後もこの事業モデルを継続できる。一方で判事はアップル以外の課金方法への誘導を禁じるなど課金の手法を事実上制限している点については問題視。カリフォルニア州法に照らせば反競争的だとして見直しを命じた。

命令はアプリ事業者にも影響を与えそうだ。米国などで有料モバイルゲームを配信する日本のアプリ開発会社幹部は課金ルールの見直し命令を「選択肢が増える」と歓迎する。いまは30%の手数料をアップルに支払い、アップストアで配信している。アップルが見直し命令に応じるなら、リンクを張って外部の決済手段に誘導することも検討するという。

アップルは有料アプリから手数料を徴収することで20年に約200億ドル(約2兆2000億円)の収益をあげ、粗利益率は8割近くに達したとみられている。米地裁命令によって収益源が損なわれるとの見方から、10日の米国市場でアップル株は前日終値に比べ3%下落した。

他方で中小のアプリ事業者はアップルの課金システムに依存している。ある国内のゲーム会社社長は「決済システムを自社で整えるにはお金も時間もかかる。運営も手間を要する」と話す。自前のアプリ流通網をもたないなかで「アップストアに並ぶ宣伝効果も無視できない」という。

今回の判決について市場独占などの競争政策を専門とする池田毅弁護士は「アップルのアプリの中で最大の収入源になっているゲームまで、30%の手数料を回避する風穴を開けたことは大きな一歩」と話す。同様にアプリ配信を通じて手数料をとっている米グーグルについても対応が注目されるとしている。

独占認定を強く求めていたエピックのティム・スウィーニー最高経営責任者(CEO)は不満を表明している。同CEOはツイッターへの投稿で「我々は戦い続ける」と述べ控訴する考えを示唆した。エピックとアップルのせめぎ合いはまだ続く可能性がある。

(シリコンバレー=白石武志)

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