米国の21年自殺者、3年ぶりに増加 人種間の差も拡大

【ニューヨーク=山内菜穂子】米国の2021年の自殺者が3年ぶりに増加した。特に人種的マイノリティー(少数派)の自殺率が大きく悪化した。米疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルス流行の長期的な影響によって今後さらに悪化する可能性があると指摘している。
CDCの報告書によると、21年の自殺者は約4万8000人で、20年に比べて4.7%増えた。人口10万人あたりの自殺者数を示す自殺率は14.1人だった。日本の自殺率(16.8人)より少ないが、過去20年で最悪となった18年(14.2人)に次ぐ水準だった。
人種間の自殺率の格差も広がった。最も自殺率が高いネーティブアメリカンは28.1人と、18年に比べて26%上昇した。黒人(8.7人)も19%上昇し、特に若者で悪化が目立った。ヒスパニック系(7.9人)は7%、アジア系(6.8人)は1%とそれぞれ上昇した。白人(17.4人)は4%改善した。
報告書は、過去の例から「災害時は自殺率が改善することがあるものの、その後は長期的な影響によって悪化することがある」と指摘。人種的マイノリティーや若者など自殺するリスクが高い人々への取り組みを強化する必要があるとしている。
米国では自殺が増加傾向にあり、大きな社会問題になっている。自殺の5割は銃によるもので、身近な銃が自殺を誘発しているとの見方もある。

バイデン大統領は「すべての米国人が必要なメンタルヘルス(心の健康)ケアを受けられるようにする」との目標を掲げている。対策の柱の一つが、22年7月に運用を始めた24時間相談できる無料の専用ダイヤル「988」だ。これまで10桁の電話番号だったのを覚えやすいように設定した。
運用開始から相談件数は急増しており、22年12月の相談通話件数は21年同月と比べ5割増加した。チャットや携帯からのメッセージ送信にも対応している。米公共ラジオ放送NPRによると、21年にはカウンセラーと話すまで3分程度あった待機時間も36秒に短縮されたという。

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