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ファンド膨張、米が開示強化 利上げ控え監視の網

【ニューヨーク=宮本岳則】米証券取引委員会(SEC)が、プライベートエクイティ(未公開株)ファンドやヘッジファンドの監視強化に乗り出す。多額損失を被った際の即時報告を義務付けるほか、高額の手数料にもメスを入れる。米連邦準備理事会(FRB)が利上げに動くなか、総資産18兆ドル(約2070兆円)規模に膨らんだ「シャドーバンク(影の銀行)」への警戒を強めている。

SECは9日、未公開株ファンドやヘッジファンドなどを対象に運用成績や手数料、報酬の詳細を顧客に提供するよう義務付ける新ルール案を公表した。約2カ月間の意見公募を経て、最終規則をまとめ、導入を目指す。1月下旬には別の規則案を発表しており、投資で多額の損失を被ったり、顧客の大量解約に直面したりした場合、直ちに米規制当局に報告するよう求める。

資産運用の主力は上場株など公開市場の商品だ。近年、公開市場の外にある「プライベートキャピタル」が拡大している。SECは18兆ドル規模に達したとみており、世界の運用総額の1割程度を占める。未上場企業に投資するファンドや、銀行が融資しない信用力の低い企業への貸し出し、私募のヘッジファンドなどを含む。流動性を犠牲にする代わりに高いリターンが見込めるとして、運用難のマネーをひきつけた。

プライベートキャピタルの監視は2008年のリーマン危機以降から本格的に始まった。10年成立の金融規制改革法(ドッド・フランク法)では、ヘッジファンドにSEC登録を義務付け、運用記録の保存も求めた。ただ当局は大手銀行の規制強化を優先した。相対的に規制の緩いファンド勢は、大手銀に代わって高リスク資産の保有を増やし、巨大化した。「シャドーバンク」と呼ばれるゆえんだ。

共和党・トランプ前政権は規制緩和を志向し、ヘッジファンドやプライベートエクイティの監督強化に後ろ向きだった。運用会社は高めの手数料収入が見込めるプライベート市場商品を強化した。ところが21年1月に民主党のバイデン政権が発足し、風向きは大きく変わった。マーケットと金融行政に精通したゲンスラー氏をSECの委員長に指名し、規制作りが一気に進む。

米当局がファンド監視を強めるきっかけになったのは、21年3月に起きた米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントを巡る騒動だ。個人の資産管理会社が規制の抜け穴を使った過剰投資で行き詰まり、取引関係のあった日米欧の大手銀行が総額1兆円の損失を被った。

今回の新規則で巨額損失の即時報告を求めるのは、ファンドの破綻が銀行に波及し、金融システム不安に陥るリスクを抑えるためだ。FRBが金融政策の正常化にカジを切り、カネ余り相場が転機を迎えるなか、価格の急変動でファンドが思わぬ損失を被る可能性は高まっている。

米の一般国民はプライベート市場の間接的な「資金の出し手」になっている。年金基金や大学財団が運用資産の2~3割を未公開株ファンドや不動産に振り向けているからだ。SECのゲンスラー委員長は21年11月の講演で「ファンドを支えているのは教師や消防士、自治体職員、学生、教授」と指摘し、規制強化の必要性を訴えた。高額の手数料を巡っては年金基金の間で不満が根強かった。

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