4州「併合」を各国非難 国連総会、12日にも決議案採決

【ニューヨーク=白岩ひおな】国連総会は10日、ロシアが一方的に宣言したウクライナ4州の「併合」をめぐる緊急特別会合を開いた。各国はロシアによるウクライナの領土と主権の侵害を非難したほか、相次ぐミサイル攻撃も批判の的となった。ロシアによる併合の試みは「違法で無効」だとして非難する決議案を12日にも採決する。
決議案は欧州連合(EU)が作成を主導し、ウクライナが提出した。決議案はロシアがウクライナ4州で実施した「住民投票」を違法だと指摘。併合の試みは「国際法上無効であり、ウクライナの地域の地位を変更する根拠とならない」と明記し、ロシア軍の即時撤退を求めている。共同提案国には10日時点で、米英仏や日本を含む少なくとも67カ国が名を連ねている。
英国のウッドワード国連大使は演説で「第2次世界大戦後、最大の強制的な併合の試みだ」と指摘した上で「プーチン(大統領)はウクライナの土地、資源、アイデンティティーを奪おうとしている」と警鐘を鳴らした。シンガポールのガフール大使は「小国にとって国連憲章や国際法の原則は学術的な議論の対象ではなく、生死にかかわる問題だ」と述べ、決議案に支持を表明した。
足元ではロシアによるウクライナの首都キーウ(キエフ)などへのミサイル攻撃が相次いでいる。ウクライナのキスリツァ国連大使は肉親が攻撃を受けた建物内におり、防空壕(ごう)にも避難できずにいると明らかにした。
キスリツァ氏は「このような残酷な事態が後を絶たない」と述べ、民間人への故意の攻撃は「戦争犯罪だ」と非難した。「国連が信頼性を回復するか、失敗に終わるかの転換点にいる」と語り、決議への賛成を通じて国連憲章を守る責任を果たすよう呼びかけた。
一方、ロシアのネベンジャ大使は改めて住民投票の正当性を主張した上で、クリミア橋の爆発をめぐり「処罰なしには済まないと警告した」と述べ、ウクライナへのミサイル攻撃を報復措置として擁護した。

安全保障理事会では9月30日、「住民投票」を違法で無効とする同様の決議案がロシアの拒否権発動で否決された。米英など10カ国が賛成した一方、中国、インド、ブラジルとガボンの4カ国は棄権した。国連総会の決議案採決では拒否権はなく、3分の2の賛成で採択される。安保理決議と異なり法的拘束力はないが、採択されれば国際社会としての総意を示す。
決議案の採決では、ロシアのクリミア半島併合を受けた2014年3月の総会決議や、ロシアによるウクライナ侵攻を非難した22年3月の総会決議などと比べた賛成国数も焦点となる。クリミア併合を無効とする決議には100カ国が賛成し、11カ国が反対、58カ国が棄権した。3月のウクライナ侵攻をめぐる非難決議では141カ国が賛成し、ロシアやベラルーシなど5カ国が反対、中国やインドなど35カ国が棄権した。

2022年2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって1年になります。戦況や世界各国の動き、マーケット・ビジネスへの影響など、関連する最新ニュースと解説をまとめました。
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