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中国、世界に偵察気球部隊 米国「40カ国以上に飛来」

【ワシントン=坂口幸裕、北京=羽田野主】中国の偵察気球の実態が浮かび上がってきた。米国務省は世界の40カ国以上の領空に偵察気球を飛来させていると分析。米軍が撃墜した気球は、軍事施設を標的に通信を傍受できるアンテナが搭載され「情報収集活動が可能だった」と断定した。中国が打ち上げた衛星を補完する狙いがあったとみられる。

米政府は9日、機密を解除して記者団に偵察気球の詳細を説明した。国務省高官によると、米偵察機U2が撮影した画像を解析した結果、通信傍受や位置情報の特定ができるアンテナと電力を生成する太陽光パネルが搭載されていた。「装備が偵察用なのは明らかだ」と明言。「民間の気象研究用」とする中国の主張を否定した。

製造は人民解放軍の公認取引先だとの見方も示した。団体名は明かさなかったが、ウェブサイトで公開している飛行映像が米領空を飛行した気球に酷似しているという。米高官は「米領空への侵入を支えた中国共産党と関係がある団体への措置を検討する」と述べ、制裁も辞さない構えだ。

気球の大きさは高さ最大200フィート(約60メートル)でバス3台分に相当する。操縦が可能で進路も変更できたもようだ。米上空では高度約6万フィート(1万8600メートル)で移動し、衛星による偵察を補完していた可能性がある。

気球は最新のテクノロジーを詰め込んだ衛星より安価で製造でき、無人で運用できるメリットがあるとの指摘もある。

在米国大使館などを通じて各国政府に米国の分析を含む情報を共有した。過去数年間で北東アジアや東南アジア、欧州、中南米の上空でも目撃された。米紙ワシントン・ポストによると、気球部隊は中国の海南省を拠点に日本やインド、ベトナム、フィリピン、台湾などの軍事関連の情報を集めていた。

明海大の小谷哲男教授は偵察気球について「衛星に比べてリアルタイムで情報が得やすく、解像度の高い画像に加え、宇宙空間まで届かない低周波数の電波が捕捉できる」と説明する。

拓殖大の佐藤丙午教授は搭載されていたと推察される太陽光パネルの規模から「ある程度の電力を必要とする機器だろう。何らかの妨害電波を出して最終的に衛星と地上基地との交信など軍事活動を妨害する作戦への活用を試していたのではないか」と分析した。

米議会では中国への強硬論が強まる。米下院は9日、中国の偵察気球が米本土に飛来したことを非難する決議を与野党の全会一致で可決した。「中国が傲慢に米国の主権を侵害した」と断じた。

ブリンケン米国務長官は2月上旬に計画していた訪中を延期した。野党・共和党が主導して下院に新設した中国特別委員会幹部は日本経済新聞の取材に対し、訪中の再調整について「中国が国際法違反を犯したと認めるまで実施すべきではない」と指摘した。

中国外務省の毛寧副報道局長は9日の記者会見で、米軍が撃墜した気球が中国の偵察気球の一部にすぎないと米側が指摘していることに関連して「中国に対する情報世論戦の一環だ」と主張した。

毛氏は10日の記者会見で米下院の決議について「政治をもてあそんでおり、中国は強烈な不満と断固とした反対を表明する」と語った。

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