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米、石油輸送規制を一時緩和 影響長期化の懸念も

犯罪集団「ダークサイド」関与か

コロニアル社が手掛けるパイプラインは全米でも最大規模(ニュージャージー州にある石油施設)=AP

石油パイプラインがサイバー攻撃で停止したことを受け、米政府が対応を急いでいる。9日には供給の混乱を避けるために一時的に規制を緩和し、ガソリンなど燃料の自動車輸送を円滑にする緊急措置を導入した。早期の再開を目指すが、長期化すれば石油製品の価格が上昇する可能性もある。

米運輸省は燃料を輸送するタンクローリーの運転手の労働時間規制を一時的に緩める緊急措置を宣言した。南部テキサスや東部ニューヨークなど南東部18の州・地域にガソリンやディーゼル燃料、航空機燃料を届けるのを規制面で支援する。

米石油パイプライン最大手コロニアル・パイプラインが手掛けるパイプラインは全長8800キロメートルと国内最大規模だ。1日あたりの輸送量は東海岸の石油製品の需要の約45%に相当する。燃料輸送の自動車輸送への代替には限界がある。

米政府はタンカーによる燃料の海上輸送を増やすため、外国籍の船にも輸送を認める緊急措置を導入できる。2012年のハリケーンでこの措置を導入したことがある。パイプライン停止が長引けばバイデン政権も導入を検討するとみられる。

現時点では燃料不足は起きていない。ロイター通信によると、南部ノースカロライナ州の大都市シャーロットの空港は、航空機燃料の備えがあるほか、ほかのパイプラインから燃料供給を受けているという。

専門家からは、パイプラインの停止が数日間以上つづけば、南東部の燃料供給に大きな影響が出て、価格の上昇につながるとの見方が出ている。ニューヨーク市場のガソリン先物は日本時間10日、一時3年ぶりの高値をつけた。

ホワイトハウス当局者は9日までに「数多くのシナリオに備えている」と語り、パイプライン停止が長期化した場合の対応策を準備していることを示唆した。同様のサイバー攻撃に対する防衛策を講じているかどうか、エネルギー業界に問い合わせているとも説明した。

犯罪集団「ダークサイド」関与か

複数の米メディアによると、米政府当局者は今回の攻撃の実行犯について「ダークサイド」と呼ばれる犯罪集団との見方を示している。米サイバーセキュリティー会社のサイバーリーズンは4月のリポートで、ダークサイドは英語圏の国に攻撃を仕掛けており、旧ソ連圏と関係する国は対象にしていないとみられると指摘した。

専門家の間ではダークサイドは東欧を拠点とし、ロシアにつながるとの見方が目立つ。

米情報機関は2020年11月の米大統領選での工作活動にロシア政府が関与したと断定した。4月の報告書では、ロシアのサイバー攻撃について「米国や同盟国の基幹インフラを標的にしている」と強調した。

19年の報告書では中国が基幹インフラにサイバー攻撃を仕掛ける能力を持つと認定し、数日から数週間にわたり、米国の天然ガスパイプラインを停止できるとの見方を示している。

サイバー攻撃は実態が外部からは分かりにくく、犯行が容易に否定される。相手の反撃を受けにくく攻撃の敷居が低いとみる向きが多く、サイバー空間で各国は難しい対策を迫られている。

日本にとっても対岸の火事ではない。加藤勝信官房長官は10日の記者会見で、国内のインフラ施設の安全確保に万全を期す考えを示した。米国のパイプラインがサイバー攻撃で停止したのを受けた質問へ答えた。「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)を中心に情報収集し、サイバーセキュリティーの確保にしっかり取り組む」と述べた。

「石油などの重要インフラは国民生活と社会経済活動の基盤だ。機能が停止した場合に多大な影響を及ぼす」との懸念も表明した。NISCが4月、データ流出などと引き換えに金銭を要求する「ランサムウエア」への注意喚起をインフラ事業者に促したとも明らかにした。

(ワシントン=鳳山太成、中村亮)

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