香港活動家「連携し立ち上がるとき」 民主主義サミット
【ワシントン=坂口幸裕、リバプール(英中部)=中島裕介】米政府が約110カ国・地域を招いてオンライン形式で開催した「民主主義サミット」は10日、2日間の日程を終えて閉幕する。2日目の討議には世界各地で闘う民主活動家らが登壇し、報道や技術のあり方など権威主義に対抗する手段について議論した。
10日のビデオ演説に登壇した台湾のデジタル担当相のオードリー・タン(唐鳳)氏は、中国を念頭に「台湾は常に世界で権威主義と対抗する最前線に立ってきた」とし、自由や民主主義、人権保護の促進に重要な役割を果たしてきたと訴えた。新型コロナウイルス禍を巡っては「権威主義の政府は公衆衛生の名目で人権侵害を正当化した」と中国を批判した。
香港の民主活動家で英国に亡命した羅冠聡(ネイサン・ロー)氏は「アジアで最も自由だと信じられていた場所が我々の目の前で権威主義に塗り替わった」と振り返り、「民主主義の価値を共有する国々が連携し立ち上がるときだ」と呼び掛けた。
ベラルーシの反体制派指導者のスベトラーナ・チハノフスカヤ氏は「多くの人が独裁者に勇気ある声を上げたことで拘束され、命を落とした」と強調。ルカシェンコ政権に対抗するため、「国際社会と民主主義の力を信じている」と訴えた。
岸田文雄首相はビデオ演説で「日本は民主主義を根付かせるために相手国に寄り添い共に歩むことが重要だと考えている」とし、「民主主義の発展は一定の時間を要するものだ。各国の取り組みを尊重することが民主主義の定着に寄与する」と述べた。
ホワイトハウスによると、9日は欧州の主要国や日本、韓国、インド、台湾など約90カ国・地域が参加した。バイデン米大統領は9日の開幕演説で「民主主義は世界中で憂慮すべき挑戦を受け続けている」と危機感を示し、各国の結束で「権威主義を押し戻す」と強調。各国の首脳らが民主主義の強靱(きょうじん)性の向上や腐敗との闘いなどを巡り意見を交わした。
英中部リバプールで10日(日本時間11日)に始まる主要7カ国(G7)の外相会合も覇権主義を強める中国やウクライナへの軍事侵攻の懸念が高まるロシアに対し民主主義陣営の結束を確認する場となる。中国の人権侵害を理由とした、2022年2月の北京冬季五輪の外交ボイコットについても議論する見通しだ。
会合には、初めて東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国もオンライン主体で議論に加わる。足元で焦点に急浮上しているのが、北京五輪に外交使節団を派遣しない外交ボイコットの対応になる。G7では米英加が表明しており、日本にも圧力がかかる可能性がある。フランスは閣外相を出席させる見方を示すなど対応が割れる兆しもある。