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米中、対話ルート確保へ一歩 台湾「偶発リスク」消えず

【シンガポール=中村亮、北京=羽田野主】オースティン米国防長官は中国の魏鳳和国務委員兼国防相との会談を皮切りに軍事衝突の回避に向けた対話ルートの確保を急ぐ。習近平(シー・ジンピン)国家主席に近い共産党中枢とのパイプづくりも探るが、台湾をめぐる対立は根深く、偶発的衝突のリスクはなお消えない。

「責任ある形で競争を管理し、オープンな対話ルートを維持すべきだ」。オースティン氏は10日の会談で魏氏にこう伝えた。魏氏も「安定した両軍関係は両国関係の発展にとって極めて重要であり、両軍は衝突と対抗を避けるべきである」との考えを表明した。

両氏は台湾や南シナ海などをめぐり原則的な立場は譲らなかったが、紛争回避が必要だとの立場では一致した。背景には米中がインド太平洋地域で軍事活動を増やし、偶発的衝突につながりかねないとの危機感が双方にある。

中国は日常的に台湾の防空識別圏(ADIZ)へ侵入し、台湾周辺で大規模な軍事演習も実施。3隻目の空母を近く進水させるとみられ、東・南シナ海で常に軍事作戦を展開できるようになる。米軍は西太平洋に空母2隻を展開するケースが増え、艦船による台湾海峡の通過を定期的に実施している。

会談に先立ち、衝突回避に向けた仕組みづくりで進展があった。国防総省高官によると、米中国防当局は春ごろまでに軍事衝突の回避策を議論する実務者協議を立ち上げて初会合を開いた。オースティン氏と魏氏は4月の電話協議で実務者会合を年内に再び開くことを申し合わせており、今回の会談でも議題にのぼったとみられる。

一方で10日の会談はオースティン氏にとって米中関係の管理に向けた一歩にすぎない。オースティン氏は対話相手として魏氏ではなく、共産党中央軍事委員会の許其亮・副主席を望んできたからだ。

中国では政府ではなく、共産党が軍の実権を握る。許氏は、中央軍事委員会主席の習氏に次ぐナンバー2を務める。オースティン氏は習氏への権力集中が進むなかで習氏にできるだけ近い人物と関係を築くことが米中の意思疎通を円滑に進めるカギとみている。

2021年11月にバイデン米大統領と習氏はオンライン協議し、軍事衝突を望まないとの認識で一致した。米政府当局者によると、この直後からオースティン氏が魏氏や許氏とそれぞれ電話協議する方向で調整が進んだが、これまでに許氏との接触は実現していない。

習指導部はバイデン政権への不信感を募らせてきた。バイデン氏が5月の日本訪問中、台湾防衛に米国が軍事的に関与すると発言すると中国側は猛反発。中国外務省の汪文斌副報道局長は5月23日の記者会見で「中国は必ず断固とした行動で自らの主権と安全保障上の利益を守る」と発言した。

米国が台湾への武器売却を相次ぎ決めていることにも不満を強めている。中国の軍事関係筋は「バイデン政権は台湾独立を支持しないと言いつつ、関係強化に動いている。言うこととやることが違う」と話す。軍ナンバー2の許氏を出さないのは米側の真意を見極めたいとの思惑もあるとみられる。

バイデン氏は21年11月、習氏に対して核やサイバー分野などを扱う戦略的安定に関する協議を提案したが、具体的な進展は見えない。核弾頭の保有数で劣る中国は、核戦略に不確実性を残して米国に対する抑止力をつくろうとしているとみられる。米中の意思疎通が難しい状況が続く。

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