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米SEC委員長、株取引「手数料ゼロ」慣行の調査指示

ゲンスラーSEC委員長(5月6日の米議会公聴会)

【ニューヨーク=宮本岳則】米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は9日、リテール証券の売買無料化を支える取引慣行について調査すると表明した。ゲーム感覚の操作で頻繁な取引を促すアプリなどにも言及し、公正な市場環境の維持に取り組むと強調した。

ゲンスラー委員長は9日、米投資銀行パイパー・サンドラー主催のカンファレンスに出席し、講演冒頭のスピーチが公開された。SECのスタッフに対し、市場をより効率的なものにする方策を考えるよう指示を出したという。ゲンスラー氏は4月の委員長就任以降、米議会の公聴会などで市場構造の見直しに意欲を示してきた。今回の講演でSECの問題意識をより明確にした形だ。

SECの調査対象にはリテール証券の売買無料化を支える仕組みも含まれる。米ネット証券最大手チャールズ・シュワブやスマホ証券ロビンフッド・マーケッツなどは、マーケットメーカー(値付け業者)に個人投資家の売買注文を回送し、その見返りにリベートを受け取っている。この「ペイメント・フォー・オーダーフロー(PFOF)」と呼ばれる仕組みが「無料化」の原資だ。

ゲンスラー氏はPFOFについて複数の問題点を挙げた。まず顧客とリテール証券の間の利益相反問題だ。リテール証券は顧客の注文を最良価格で執行する義務を負っている。ロビンフッドは多くのリベートを受け取る見返りに、顧客の価格改善効果を犠牲にしていたと指摘した。こうしたコストは個人にとって「手数料ゼロで節約できる額を超えていた可能性がある」という。

次にPFOFが個人に短期トレードを促す動機になっている問題だ。ロビンフッドの提供するモバイルアプリはゲームのような操作感覚で初心者を取り込んでいた。ゲンスラー氏は「多くの機能が投資家に頻繁な取引を促している」と指摘し、マーケットメーカーから受け取るリベートの増加につながっていると述べた。

米国株式市場では個人の投機的な売買が目立っている。米映画館チェーン大手AMCエンターテインメント・ホールディングスなどSNS(交流サイト)で話題の銘柄に個人の買いが集まり、株価急騰を招いていた。ゲンスラー氏は手数料ゼロと短期売買が招いた非効率な価格形成を問題視しているようだ。

ロビンフッドは株式公開に向けて準備を進めている。SECの調査がPFOFの見直しに発展すれば、将来の収益悪化リスクが高まる。上場時の公開価格にも悪影響が出る可能性がある。投資ブームの恩恵を受けていたマーケットメーカー大手、米バーチュ・ファイナンシャルの株価は9日、終値で前日比8%安となった。

もっともSECがPFOF禁止まで踏み込むのか不透明だ。リテール証券はPFOFなしで取引無料化を続けるのは難しい。米投資銀カウエンのアナリスト、ジャレット・セイバーグ氏は「(PFOFを問題視する)米民主党議員も手数料ゼロ取引そのものを禁止しようとはしていない」と指摘する。選挙前に個人投資家の反発を招きかねないからだ。必然的にPFOFも存続することになるとみていた。

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