テスラ株12%下落 マスク氏の保有株売却巡り懸念広がる

【ニューヨーク=大島有美子】9日の米株式市場で米電気自動車(EV)のテスラ株の売りが加速した。終値は前日比で12%下げた。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がツイッター上で保有するテスラ株の10%分を売却すべきかを問う前に、同氏の実弟が同社株を売却していたとの報道が伝わり、下げが加速した。
テスラ株の1日の下落率が10%を超えるのは2020年9月以来、1年2カ月ぶり。営業日ベースで3日続落し、9日は1023ドル50セントで終えた。10月26日以来の安値で、3日間の下落率は17%に達した。

マスク氏は6日、保有するテスラ株の10%を売却してでも納税すべきかどうかをツイッター上の投票によって決めると表明。株式売却への賛成が反対を上回ったが、投票結果を受けた対応はまだ明らかになっていない。同氏が10%分を売却する場合、約200億ドル(約2兆2500億円)相当の株式が放出されることになり、市場では大量の株式売却による値下がり懸念が広がっていた。
9日には、マスク氏の弟であるキンバル・マスク氏などが投票前に一部の株式を売却していたとの報道が流れ、売りが加速した。米オアンダのエドワード・モヤ氏は「テスラ株は危険水域に近づいている。心理的な節目となる1000ドルを割り込めば、パニック売りを誘発する可能性もある」とみる。
気候変動対応への関心の高まりを追い風にテスラ株は個人投資家の人気も高く、上昇基調にあった。直近では10月下旬にレンタカー大手のハーツ・グローバル・ホールディングスがテスラ車10万台の購入を表明。マスク氏は契約は結んでいないとしたものの、市場の期待は高まっていた。過去1年で株価は2.5倍に上昇した。
株価を押し上げた背景には、個人投資家のコールオプション(買う権利)買いもある。コール買いがマーケットメーカー(証券会社)による現物株のヘッジ買いや空売りの買い戻しを呼び、株価をさらに押し上げる「ガンマスクイーズ」と呼ばれる現象が起きた。
マスク氏が保有株売却を表明すれば、短期的な先高観が薄れ、個人がコールを手放す可能性がある。これまでの逆回転の現象が起き、現物株に売り圧力が強まりかねないとの見方もある。テスラの時価総額は1兆ドルを超え、乱高下すれば株式市場全体への影響も無視できない。市場はその値動きに神経をとがらせている。