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米金利低下に日本の影(NY特急便)

米州総局 後藤達也

米長期金利は9日、1.4%台に低下した=ロイター

6月に入ってから、米長期金利が低下傾向を強めている。9日のニューヨーク市場では一時1.47%にまで低下。5月末と比べ0.1%あまり低くなった。米雇用の回復の勢いがやや鈍っていることで売り方の買い戻しが強まっている。加えて、じわりと金利低下を促しているのは日本の投資家の買いとの声も出ている。

9日の米国株相場は小幅安だった。10日に米消費者物価指数(CPI)の発表を控え、様子見ムードが強かった。ところが米国債市場は前日に続いて、金利がスルスルと低下(価格は上昇)した。仮に物価が予想以上に上昇しても、金利が急上昇するとの警戒が薄れている。新型コロナウイルスのワクチン普及や経済再開を受けて上振れする経済指標が出始めた春先との違いだ。

今回の金利低下のきっかけとなったのは、4日発表の5月の米雇用統計だ。非農業部門の雇用者数は55万9000人増と市場予想(65万人増)を下回った。4月とあわせても83万7000人増で、経済再開が進んでいる割には雇用の回復は勢いを欠く。市場では「米連邦準備理事会(FRB)が強力な金融緩和をもう少し長く続ける材料となった」(運用会社ティー・ロウ・プライス)との声が多い。

雇用統計の発表前、市場には6月15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング(資産購入の減額)に向けた議論が始まるとの思惑もあった。だが、雇用統計を機に「議論の開始は早くても7月だろう」との見方が増え、これまで米国債を売っていた投資家が買い戻しを迫られている。

「日本の投資家も動いている」。米国債トレーダーの間ではこんな指摘も増えている。米金利急上昇(価格急落)への警戒感が徐々に薄れたことで、日本国債よりも金利水準の高い米国債に妙味を見いだし始めたという。

たしかに米10年債利回りは2~3月に急激に上昇したが、4月以降は1.5~1.7%程度のレンジで推移した。米国債版VIX(恐怖指数)と言われるMOVE指数は2月に70を超えていたが、6月には50を下回った。

日本の財務省の集計では、日本の投資家は海外の中長期債を2~3月に約1兆3000億円売り越した。一方、4~5月は約2700億円の買い越しだ。金利の動きが落ち着く中、新年度に切り替わったことで米国債を買う動きがじわりと広がっている。

円相場の動きが膠着していることも大きい。外国債を買ったときの為替変動リスクが抑えられるためだ。為替ヘッジをかけるコストも低く、「米5年債(金利は0.75%程度)などへの人気が高まっている」(邦銀)という。

日本の長期金利は日銀によって0%程度に抑えられている。物価上昇への展望も開けず、この先数年も長期金利の上昇を見込む投資家は少ない。

FRBが金融緩和の修正を今後探る中でも、日本など海外の投資家から米国債の購入が続けば、長期金利の上昇は抑えられる。日銀の金融緩和が図らずも米国債相場や米国株相場を側面支援する構図になっているとも言えそうだ。

(ニューヨーク=後藤達也)

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