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米SEC、SPACの「誇大」業績見通しに警告 摘発も

SECはSPACへの監視を強める=ロイター

【ニューヨーク=宮本岳則】米証券取引委員会(SEC)が特別買収目的会社「SPAC」への監視を強めている。SPACが新興企業との合併時に将来の業績見通しを開示していることに関して8日、虚偽があれば摘発対象になると警告した。一部の企業で誇大広告や受注水増し疑惑が浮上しており、強いけん制が必要と判断した。

SPACとは事業会社の買収のみを目的とした「箱」のような企業だ。未上場の新興企業は、上場済みSPACとの合併を通じて株式公開企業になれる。通常の新規株式公開(IPO)に比べて短期間で上場会社の地位を得られるとして、スタートアップ勢の関心を集めてきた。新興電気自動車(EV)メーカーなど、売上高がほぼゼロの企業もSPACとの合併で上場を果たしている

SPAC経由の上場を巡っては、準備の短縮化に加え、開示面の優位性が語られてきた。「伝統的なIPOは(業績の)見通しを話せないが、SPACとの合併では可能だ」。SPACブームの火付け役といわれる著名投資家チャマス・パリハピティヤ氏はこのように主張し、機関投資家や個人のマネーを集めてきた。同氏はすでに6件のSPAC上場を成功させている。

著名投資家チャマス・パリハピティヤ氏は「SPAC王」の異名を持つ=ロイター

SPACによる業績見通しの開示は、証券民事訴訟改革法(PSLRA)のセーフハーバー・ルール(安全港の規定)の存在が大きい。開示内容が「故意の嘘」ではない限り、計画未達でも投資家に対する責任は免除される。つまり計画未達の原因が「無謀な計画だった」「過失だった」と立証できれば、民事賠償は回避できる。

通常のIPOではセーフハーバー・ルールが適用されない。投資家が計画未達で会社や経営陣を訴えるリスクが高く、事実上、見通し開示ができなかった。一方、SPAC経由の上場は合併行為で、同ルールが適用されると解釈されている。一部の新興EVメーカーは合併時に出荷台数が急激に伸びる計画を提示し、投資家の歓心を買っていた。売上高ゼロでも上場できたゆえんだ。

SEC企業財務部門の幹部、ジョン・コーツ氏は8日の声明で、SPACの優位性を強調する有力者の発言について、誇張されていたり、誤解を招いたりしていると批判した。声明文の中で、わざわざパリハピティヤ氏の発言動画を紹介しており、同氏を強くけん制する意図は明らかだ。

コーツ氏は、SPAC合併がセーフハーバー・ルールで投資家への責任を免れたとしても、SECによる法執行は免除されないと警告した。さらに将来見通しに虚偽があった場合、同ルールの適用外と強調した。SECはすでに新興EVメーカー、米ローズタウン・モーターズの予約台数水増し疑惑で調査に入っている。

SPACブームは広がりを見せている。米調査会社ディールロジックによると2021年1~3月期のSPAC上場は298件に達し、早くも前年通期の実績(248件)を上回った。シンガポールは米国の活況をみてSPAC上場解禁を決め、日本取引所グループや香港取引所も解禁の是非を議論している。米国で不祥事が相次ぐ事態になれば、各国の導入論議に影響を与えかねない。

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